冒険野郎がきた!


データ

脚本は阿井文瓶。
監督は筧正典。

ストーリー

ランニングするスポーツクラブの生徒たち。
それを楽しそうに見つめる男。
そこに突如怪獣が現れた。
アフリカの原住民のような装束をまとったその男は、呪文を唱えながら何か怪しい踊りを踊り始めた。
男の踊りに合わせて踊りだす怪獣。
男は怪獣の隙を突いて槍を怪獣の鼻の穴に命中させる。
それを鼻息で吹き飛ばす怪獣。
怪獣はそのまま地中に潜っていった。
男は佐藤三郎といい、MACの隊員であった。
三郎はアフリカから帰ってきたばかりで、ゲンとともに都内のパトロールをするように命じられていた。
子どもたちにアフリカのお土産をプレゼントする三郎。
三郎は隊員服に着替え、マックロディに乗り込みパトロールに出る。
三郎は怪獣の気配は臭いでわかると言う。
あくびをして緊張感のない三郎に呆れるゲン。
眠り込む三郎。
三郎は目を覚ますとゲンを誘い野山でおにぎりを食べる。
おにぎりを落とす三郎。
おにぎりは転がって穴に落ちるが、すぐに穴から吐き出されてしまった。
不審に思った三郎は穴に飛び込んでみる。
すると三郎も穴からはじき出された。
今度は火のついた煙草を中に放り込む。
すると地中から怪獣が現れた。
穴は怪獣バンゴの鼻の穴だった。
本部に連絡するゲン。
バンゴは給水塔を引っこ抜き、それを棍棒のように使って街を破壊する。
マッキーもそれを攻撃。
バンゴは持っていた鉄塔でMACの攻撃を交わす。
それを見た三郎は何かを思いつき単独行動を取る。
それを追いかけるゲン。
三郎はアドバルーンに掴まるとそれに上り始めた。
アドバルーンの上で煙草を吸う三郎。
三郎はバンゴが近づいてきたのを見ると、煙草をアドバルーンにつけて爆破させた。
アドバルーンから落ちる三郎。
三郎はアドバルーンを破裂させると自分が落ちることを忘れていたという。
怪獣は一旦逃げるも再びガスタンクの近くに出現。
ガスタンクを次々と爆破するバンゴ。
さらに火のついた棒を見つけたバンゴは三郎の真似をして次々にアドバルーンを破裂させた。
それを見たゲンは「あいつは面白いことは何でも真似するんだ」と作戦を思いつく。
その作戦は自分たちが息を吸い込み体を膨らませる振りをして、それをバンゴに真似させるというものだった。
ヘリウムガスを三郎の隊員服に吹き込み、息を吸って膨らませたかのように見せるゲン。
怪獣は浮き上がった三郎を見て自分も息を吸い込み始める。
さらに三郎の煙草を真似ようと工場の煙突を抜き黒煙を吸い始めるバンゴ。
しかしバンゴはむせてしまい咳き込み始めた。
その風圧で上空から落下しそうになる三郎。
それを見たゲンはレオに変身し、三郎を救出する。
バンゴと格闘するレオ。
最後は光線を浴びせてバンゴを倒す。
レオは怪獣に特殊ガスを吹き込みバンゴを宇宙の彼方に飛ばしてしまった。
三郎は雪男の探検に今度はヒマラヤに行くという。
それを快く送り出すダンとゲン。

解説(建前)

三郎は何故あれだけ高いところから落下しても大丈夫だったのか。
これはやはりMACの制服に秘密があると考えるのが妥当であろう。
MACの制服は中にガスを入れてもなかなか破れないほど素材の密閉性が高い。
したがって自然落下する場合でもそれを少し翻すだけで、ある程度落下速度を減速させることが出来るのであろう。
とは言えパラシュートに比べると落下速度が速いので、やはり佐藤が細身でかつ強靭な足腰を持っていたからこそ大事に至らなかったと考えるのが妥当である。

感想(本音)

レオの雰囲気からはかなり異色なコメディタッチな話。
特訓もなく、相手も普通の怪獣ということもあり、ある意味オーソドックス。
肩の力を抜いて見ることが出来る、良質な娯楽作といえよう。
個人的には好きな部類に入る作品である。

今回、ダンがほとんど出ない。
これは単にストーリーの関係だけなのだろうか。
そういえば前回も特訓はゲン1人だった。
もしかするとこの話はダンのスケジュールの都合で考えられたのかもしれない。
ダンの出演はラストのワンシーンだけだし。
しかしラストのダンの爽やかさはここまでのレオにはなかったもの。
ウルトラセブンの頃なら普通に見られた笑顔かもしれないが、逆に言うとそれだけ地球が危険に晒されてる証左でもある。
MACもウルトラ警備隊に比べると明らかに弱い組織であるし、変身能力を失ったダンの心中察するに余りある。

今回は何といっても佐藤隊員主役話。
正直アフリカ帰りで変な民族衣装を着て踊りだすのは引くが、まあ型破りな隊員ということでギリギリ許容範囲であろう。
しかしMACにアフリカ支部があったなんて意外である。
アフリカにも怪獣が出るのであろうか。
これはウルトラシリーズ共通の謎であるが、他の国では怪獣が出た時どうしているのであろうか。
ウルトラマンは日本だけの名物なのか?
それはともかく、最後はヒマラヤに行くとか、自由人過ぎる佐藤隊員には圧倒される。
さすがにヒマラヤ支部とかはなさそうなので、これは休職若しくは退職してヒマラヤに探検に行くと考えるのが妥当であろう。

ところでダンは佐藤に敬語を使っていた。
もしかすると佐藤はアフリカに行くまでは、日本でダンの先輩だったのかもしれない。
そして佐藤がアフリカに行ってる間にMACが組織され、ダンがその隊長に抜擢された。
佐藤は見るからに出世とかに興味がなさそうな人物である。
アフリカから戻ってきても、身分は平隊員のままだったのであろう。

今回はバンゴのキャラがなかなか立っていて良かった。
子どもっぽくゲンや佐藤の真似をするところなんか憎めない。
最後どうなったのか今ひとつわからなかったが、風船にされて飛ばされるのは少しかわいそうであった。
ただし、バンゴはかなり凶暴な怪獣でもある。
バンゴ的には無邪気に暴れてるだけなのかもしれないが、団地は壊滅、ガスタンクは爆破では始末されても文句は言えないだろう。
そう考えると、怪獣に対する妙な思い入れもなく、かといって残酷さも上手くオブラートに包んだあの締め方は最良だったのかもしれない。

今回は佐藤の喫煙シーンが異常に多かった。
時代を感じさせるが、今では不可能であろう。
当時はまだ喫煙というとリラックスというイメージが強かった。
嫌煙権運動は始まってはいたものの、まだまだテレビの制作現場などでは煙でモヤってるというのは日常茶飯事だったようである。
佐藤が煙草を吸うのも、そういう力の抜けたところを表現したかったのであろう。
この話のテーマとしては、そんなにカリカリせず、もっと気楽に自由に生きていきましょ、というのがあったのではないか。
結果的に普段のレオに対するアンチテーゼになってるところが興味深い。

今回の話はストーリー展開的にはタロウや初代マンに近い。
例えば、佐藤やゲンがコミカルな作戦を立ててバンゴを誘導する展開などは、初代マンのシーボーズやスカイドンに近いものがあろう。
もちろんテーマ的な深みはあまりないが、テーマなんてものは子ども時代にはあまりわからないものであるから、子ども番組的にはこれで十分である。
テーマは重厚でも子どもが見てつまらないというのは子ども番組的にどうなのか。
ウルトラマンはそれを両立してたから凄いのであって。

もちろんこういう子どもっぽい話が嫌いな子どもたちもかなりいただろう。
私はリアルで視聴していたわけではないので当時の子供たちの感覚はわからないが、特に1期や2期前期の作品に愛着を感じる子どもたちにとっては意に沿わないことが多かったかもしれない。
それは個人の感じ方次第なので、仕方ないであろう。
ただ、自分の趣向に合わないから駄作であるという考えには私は絶対に与しない。
それは作品の評価とは別であるから。

私が前話を酷評したのはテーマ的な問題ではなく、脚本の整合性やテーマの見せ方が拙すぎたことに問題を感じたからである。
そしてそういう破綻が生じたのは、皮肉であるが、あまりにもテーマを盛り込むことに拘った結果であろう。
前話も素直に、怪獣におじさんを殺された少年の復讐をするという話で十分であった。

前述したスカイドンの話にしても、佐々木実相寺コンビだからこそテーマ的に見られているが、他の脚本家・監督だったら、それほど見る側もテーマを意識しなかったかもしれない。
本話にもテーマらしきものは感じられる。
ただ、それはあくまで匂わせるだけで、全面には出ていない。
そして子ども番組としてはそれで十分なのである。
テーマだけ伝えたいなら何もウルトラである必要はない。
あまりにもテーマを盛り込もうとして番組のバランスを崩すのは、子ども向け娯楽番組としては本末転倒だと思う。


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