データ 脚本は阿井文瓶。 監督は深沢清澄。 ストーリー MACは地球に迫る流星を発見。 その流星から生物反応が出たことから地球へ出撃する。 ゲンは青島と落下地点に到着。 そこに怪獣を発見した2人は、マッキーで攻撃する。 怪獣が振り向いたら撃てと青島から指示を受けるゲン。 しかしゲンはその怪獣の顔を見て驚く。 それはレオがL77星にいた頃にペットとして飼っていたロンであった。 ゲンは呆然として攻撃の機会を逸してしまう。 その間にロンの攻撃を受け墜落する仲間のマッキー。 結局ロンは地中に逃げてしまう。 基地に帰ったゲンは同乗していた青島に責められる。 「もう我々はこいつと一緒に戦うのは嫌です」。 ダンは隊員たちにマッキーの整備をするよう命じる。 「L77星の生き残りはお前だけではなかった」とダン。 「L77星にいる時は大人しい生き物でした。かわいい奴だった。それがあんなに傷だらけになってしまって。よほど苦労したのでしょう。僕には撃てません」とゲン。 「甘えだ。お前は撃つべきだった」とダン。 「故郷の星を失った悲しみは、誰にもわかりっこありません」。 「一歩間違えっていれば、お前もああなっていたということか」。 「あいつには帰っていく家もない、親兄弟もないんです」。 「MAC隊員失格だな」とダン。 公園でギターを抱えて歌を歌うゲン。 その時公園で遊んでいたカオルが、友達のミコが母親に甘えるのを見てミコの持っていた飴を踏みにじった。 カオルに注意するゲン。 しかしゲンは両親を亡くしたカオルの気持ちが痛いほどわかり、きつく叱ることができなかった。 そこへ現れる百子。 百子はミコに謝らないカオルの頬を平手打ちする。 百子にすがって泣くカオル。 リコに謝るカオル。 「ミコちゃんごめんね。カオル羨ましかったの」。 2人は仲直りして一緒に遊ぶ。 「何故知らん顔で見てたの。何故カオルちゃんを叱らなかったの」と百子。 「寂しいからと言って、悲しいからと言って何をしてもいいなんてことはないわ。甘えさせちゃいけないのよ。そんなのは同情にもならない。まして本当の愛情があったら、絶対知らん顔なんて出来ないはずよ」と百子。 ラジオのニュースによると、ロンが動き回ってるせいで火山活動が活発化し弱い地震が続発してるという。 その時大きな地震が起こった。 その頃MACはロンを追って山に来ていた。 ダンによると、ロンは地中のエネルギーを吸収して強力な攻撃力を身につけているという。 そこへゲンが現れる。 ゲンと一緒に戦うことを拒否する青島。 ダンはゲンにレーダーの監視役を命じる。 山からロンが現れた。 攻撃するMAC。 しかしロンは火山のエネルギーを吸収して光線を出せるようになっていた。 光線を受け墜落するマッキー。 それを見たゲンはマックロディーで地上からロンを攻撃。 何とかロンの火炎攻撃をかいくるも、ロンに車ごと踏み潰されてしまう。 レオに変身するゲン。 宇宙に帰るよう指示するレオ。 しかしロンはその指示に従う振りをして、レオに不意打ちを加える。 ロンの尻尾を使った攻撃に苦戦するレオ。 さらにロンは光線を放った。 すかさず身を交わし、ロンを投げ飛ばすレオ。 レオが止めを刺そうとするとロンは大人しくなった。 レオはロンを小型化させ、宇宙へ連れて帰る。 カオルに子犬をプレゼントするゲン。 「ロンていうんだ。かわいがってね」とゲン。 喜んで友達に見せに行くカオル。 「おおとりさん。もっと他にいい名前ないの。ロンてあの怪獣でしょう」と百子。 「うん。でも本当はいい奴なんだ」とゲン。 解説(建前) ダンは何故ロンがL77星の生き残りであるとわかったのであろうか。 まず考えられるのはウルトラの星から情報を得たということ。 しかしウルトラの国でロンを監視してたとは思えないし、その情報の伝達方法もわからないことからその可能性は低いであろう。 これはやはりダンがロンがそもそもペット用の怪獣だということを知っていたからと思われる。 そしてゲンの態度からその飼い主がゲンだと察しがついた。 それはダンが「さっきわかったばかりだ」と言ってることからも了解されよう。 レオとロンはL77星ではどれくらいの大きさなのだろうか。 これはマグマ星人の襲撃シーンや、小型化したロンのサイズから考えて、地球の人間とほぼ同サイズと考えて間違いないだろう。 これは巨大化が相当のエネルギーを要することからも了解できる。 つまりレオは普段はエネルギーの消費を少なくするため、小型化してL77星に住んでいたと考えることが出来る。 ロンは何故巨大化したか。 これはおそらく宇宙を放浪するうちに宇宙線か何かのエネルギーを吸収したのであろう。 宇宙線により生物が巨大化する例はこれまでにも多々見られ、ウルトラでは普通によく起こる現象である。 では何故ロンは小型化したか。 これもやはりエネルギーが関係するだろう。 すなわち、レオはロンの吸収したエネルギーを吸収したのである。 エネルギーを吸収して巨大化したり小型化したりが可能なのかはわからないが、物質をエネルギーに変換できる以上、その逆が不可能とまではいえまい。 ウルトラ一族はエネルギーを自由に操ることが出来ると考えられるので、レオがロンを小型化するのに特別な超能力は必要ないものと考えられる。 感想(本音) シンプルだがよくまとまった好編。 映像や曲の良さと相まって、なかなか印象深い作品に仕上がっている。 カオルの絡みがやや説教臭くはあるが、百子の言うことは正論でありゲンの間違いをわかりやすく描いている点、子ども向きとしては正解であろう。 珍しく特訓もなく、普通のウルトラの話である。 今回は隊員たちのゲンに対する不満がストレートに描かれている。 ただその問題に対する解答は本作にはない。 その辺りやや消化不良ともいえるが、後にもゲンに対する不満は描かれており、その伏線と解釈すればそれほど気にはならないだろう。 とは言え、ゲンがロンを攻撃しなかった理由をどう隊員たちに説明したのか。 本当のことは言えるわけもなく、結局ゲンが仲間の指示に従わずスタンドプレーに走ったということになろう。 これでは隊員たちの不満が溜まって当然である。 レオとロンの回想シーンは何故か砂漠をバックにしており何処となくシュール。 L77星はウルトラの星同様、緑のない星なのだろうか。 レオが超人化していることからも、L77星にはウルトラの星同様プラズマスパークがあるのかもしれない。 L77星があっさりマグマ星人に滅ぼされたのも、もしかするとプラズマスパークを先に壊されていたからではないか。 ウルトラ一族の変身メカニズムは謎に包まれているが、やはりある特定のエネルギー若しくは宇宙線を必要としているように思われる。 冒頭、流星が地球に迫るのを暢気に眺める隊員たち。 正直、あの大きさの流星が地球に衝突したら結構危険だと思うぞ。 MACは宇宙からの侵略以外には出動する権限がないのであろうか。 まあ、ああいうのんびりした態度が全滅を招いたともいえるが、それはまたいずれ述べることにしよう。 今回は真夏氏の弾き語り星空のバラードが聞けるという、超貴重な回である。 しかし怪獣が出現したというのにえらい暢気な。 これは本編では触れられなかったが、一応謹慎を命じられたということにしておこう。 しかしカオルちゃんはいくら子どもだからって、飴を踏みにじるのは相当酷い。 これは怒られて当然だから百子の言うことが正論であるが、「寂しいからと言って、悲しいからと言って何をしてもいいなんてことはないわ」というセリフはなかなか深い。 秋葉の大量殺人を例に出すまでもなく、最近は身勝手な動機で関係ない人を巻き込む事件が増えている。 いくら不幸だからって、悪いことは悪い。 それを他人に転嫁することは決して許されないのだ。 そして悪いことをした場合にはそれ相応の罰は与えるべき。 それは決して体罰ではなく、むしろ何も罰を与えないことこそ問題なのである。 今なら学校や幼稚園で子どもに平手打ちをするのはちょっとした問題となろう。 しかし躾の範囲であれば、時には軽い体罰も必要なのである。 専門家は体罰は暴力の連鎖を生むとして反対してるが、悪いことをしてほっとくこと自体にそれを上回る弊害があるのではないか。 いずれにせよ体罰が必要になっている時点で問題は顕在化しており、いくら暴力の連鎖がよくないからと言ってそれを放置していたのでは何も問題は解決しないであろう。 体罰はしない方がいいに決まっているが、今回のカオルのように他人の気持ちを踏みにじる行為に対しては体罰が必要なのである。 それがその子に対する愛情であり、その子の将来を考えた行為だと思う。 話は脱線したが、今回のテーマがそういう愛情のある体罰にあるのは間違いないであろう。 ゲンもロンに同情するあまり、破壊活動をするロンを見逃してしまった。 当然この行為はMAC隊員として許されるものではないが、ロンにとっても悪影響を与える行為なのである。 ロンのことを考えると、レオがしたようにしっかり罰を与えなければならない。 最終的にロンが大人しくなったのも、そういう愛情ある体罰がロンにも届いたからであろう。 ただ本話で以上のテーマがしっかり描かれたかはやや疑問が残る。 まずロンは被害を受けた人に謝っていない。 ただ暴力で押さえ込まれただけなので、カオルのように自主的に反省したかがわからないのである。 またロンは所詮ペットであり、人間と同じようには考えられない。 確かにレオにとってロンはペット以上の存在かもしれないが、ロンがレオをどう思っていたかはわからず、どれだけ意思疎通が出来てたかは微妙である。 ペットに対して体罰で躾けるのは常識であり、ゲンの思い入れはわかるが愛情のある体罰というテーマを表すにはやや厳しいところがあろう。 それがわかるように挿入したカオルのエピソードであろうが、返って疑問が生じてしまった。 以上のようにテーマ的にやや消化不良感の残る本話であるが、本話にはそれを補ってあまりある余情がある。 すなわちラストの犬と戯れるシーン。 ゲン、百子、カオルの表情やバックに流れる星空のバラード。 何か懐かしい温かい、そういう気持ちにさせるシーンである。 こういう演出は最近ではあまり見ない。 レオが人気のある秘密は、こういう映像や楽曲の秀逸さもあるであろう。 レオの魅力は決して脚本に突っ込んでばかりでは見抜けない。 このラストは話の雰囲気にもマッチしており、とても清涼感のある幕切れとなっている。 躓きそうになってる百子さんとか、なかなか趣き深い。 ただこのシーン、後の話で再び登場することになる。 その内容が内容だけにこの幸福感は皮肉ではあるが、現段階でそのことは想定されてなかったのであまり気にしないことにしよう。 本話には故郷や家族を失ったものの悲しみ、そしてそれに甘えてはいけないというメッセージがこもっている。 そういう意味では非常にレオらしいエピソードといえるだろう。 |