データ 脚本は石堂淑朗、山元清多。 監督は古川卓己。 ストーリー ある山村に超獣が出現。 しかしTACが駆けつけた時には既に超獣は姿を消していた。 村人達によると超獣は「ハンザキの化け物」だという。 ハンザキとはオオサンショウオのことで、体を引き裂かれても死なないことからそう呼ばれている。 スペースの山中からの指示で洞窟に向かう北斗たち。 北斗は洞窟の近くで気を失って倒れている少女を発見する。 少女の名はさゆりといって鍾乳洞に祖父と一緒に住んでいた。 さゆりによると急に目の前が暗くなって倒れたと言う。 北斗らが少女を鍾乳洞に送っていくと、中には老人が待っていた。 「さゆり何処行ってたんだ。ショウベイはとっくに帰ってきたぞ」と言う老人。 ショウベイとは洞窟に住み着いているオオサンショウオで日に当たらないため色が真っ白であった。 オオサンショウオの化け物が村を破壊したと聞き、笑い出す老人。 「村の奴らは罰が当たったのだ」と老人。 少女によると老人は村人達と仲が悪く、特にオオサンショウオをめぐって仲違いしていた。 サンショウオは村人の撒いた除草剤や農薬の影響で数を減らしていた。 老人はオオサンショウオを保護するため自分の家屋敷まで売っていたという。 ショウベイはその最後の1匹であった。 ショウベイを疑う吉村だったが、さゆりは「ショウベイは化け物ではありません」と言う。 笛を吹きショウベイを操って見せるさゆり。 「ショウベイは村を壊したりしません」。 ひとまず基地に帰る北斗ら。 北斗は洞窟のサンショウオを怪しむ。 「オオサンショウオは半分に裂かれても生きているからハンザキという。小型の超獣に違いないが」と吉村。 一方洞窟では老人がショウベイを外に連れ出すため、笛を吹いてショウベイを呼び寄せる。 「超獣騒ぎで、外へ連れ出すと危ない」とさゆり。 「こんな穴の中に住んでりゃたまには外に出たくなるさ。わしらだって家屋敷を取られなきゃ。友達1人いないお前が不憫だ」とさゆりに言う老人。 「みんな村の奴らのせいだ」。 老人が外に連れ出し手を離すと、急に巨大化するショウベイ。 「あの時も周りが暗くなったわ。ショウベイは太陽の光を吸って巨大化するのよ」とさゆり。 「やれ!ショウベイ」狂ったように叫ぶ老人。 「ショウベイ、何で超獣なんかになってしまったの?もう遊べないの?」とさゆり。 TACは超獣をレーダーで捉え出動するが、ショウベイは少女の吹いた笛の音を聞いて元の姿に戻った。 「よくやったショウベイ。お前がいたらわしは千人力じゃ」と言う老人。 「もう二度と外に出しては駄目」と言うさゆり。 「わかってるよ」と言う老人だが、酒を飲んで満足げだ。 TACが駆けつけた時には既に超獣は姿を消しており、北斗らはさゆりの住む洞窟へと向かう。 交替で見張りをするTACだったが、老人は別の出口からショウベイを持って外に出ていた。 ショウベイは朝日を浴びて超獣に変身。 「北斗さん。お願い。ショウベイを殺さないで」とさゆり。 TACはミサイルやレーザーで攻撃するが、通用しない。 「物凄い生命力だ。八つ裂きにしても死にそうにないな」と吉村。 超獣の出す溶解液と白煙に空からの攻撃を諦め地上に下りるTAC。 ショウベイを休ませるため笛を吹く老人。 「俺はショウベイを使って村の奴らに復讐するんだ。ショウベイ、TACをやっつけてしまえ」と老人。 超獣は溶解液や炎を吐いてTACに襲い掛かる。 しかしさゆりまで攻撃され、慌てる老人。 老人は笛を吹くが超獣は言うことを聞かない。 老人はさゆりを庇って、溶解液で溶かされてしまった。 必死にさゆりを助ける北斗。 さゆりを抱えてエースに変身する北斗。 エースは超獣の生命力に技が通じず苦戦する。 しかしエースは超獣のエネルギーの源が太陽光線であることに気づいた。 太陽光線を遮断するエース。 超獣はショウベイの姿に戻る。 元に戻ったショウベイを元の洞窟に閉じ込めるTAC。 「おじいさんはたった1人の肉親だったわ、ショウベイはたった1人の友達だったわ」と泣くさゆり。 「たった1人の友達は永久に地の底から出てくることはないだろう。しかし新しい6人の友達がいるじゃないか」と隊長。 その後さゆりは竜隊長の姉に引き取られ幸せに暮らしている。 解説(建前) ハンザギランは何者か。 サンショウオの呪いなのは間違いないが、太陽光線を吸収して巨大化したからにはただのサンショウオではないだろう。 やはり、ヤプールの破片と何か関係あると考えるのが自然である。 これはおそらくショウベイが外に出た時、たまたまヤプールの破片と遭遇したのではないか。 そしてそれを食べるか何かして体内に取り込んだ。 そして超獣に変身したものと思われる。 ショウベイは光に飢えていた。 それがヤプールの破片の与えた特殊な力と結合し、日に当たると超獣になるようになったのだろう。 村に対する恨みもあるだろうが、村を破壊していた時無邪気に遊びまわってるように見えたので、それほど恨みはなかったのではないか。 馬や牛を食べたのも恨みというより、単に食欲を充たしただけに思われる。 さゆりが倒れたのは何故か? 急に目の前が暗くなったということだが、これはショウベイが太陽光線を吸収したためと考えられる。 普段太陽光線にあまり当たっていないので、急に暗くなった後、急に明るくなったことからめまいがしたのだろう。 北斗は何故さゆりを抱えて変身したのにばれなかったのか。 これは少女が動転してたのと、急激な光で一瞬気を失ったためと考えられる。 子供時代によくわからない出来事に遭遇すると、子供はそれを無視してしまうものである。 その意味がわかるのは大人になってからであろう。 北斗がウルトラマンなんて、一瞬そう思ったとしても打ち消すのが通常である。 感想(本音) なかなか凄い話。 鍾乳洞に暮らす祖父と孫って、設定が怖すぎる。 しかもサンショウオのために家屋敷を売り払ったって…。 ここまで行くと危ないどころか○○○○である。 まあ、獏おじさん、スチール星人、パンダおじさんに次ぐ危ないおじさん第4弾であろう。 石堂氏は今回のように庶民を悪役に描くことが多い。 フブギララ編しかり、コダイゴン編しかり。 しかし時にはMATを悪く描いたり(パラゴン編)、教育ママを非難したり(バッドバアロン)、庶民だけでなく人間全体を斜に構えて見ている節がある。 とかく突飛な作風ばかりが取上げられる同氏であるが、人間のエゴや醜い面をさり気なく話に盛り込むその手腕も見逃されてはならないだろう。 子供番組でありながら、子供達に生々しい社会の現実をさり気なく教える。 さすが一流脚本家である。 反面ちょっと怖い気さえするが。 以下細かい点を。 冒頭の2頭の逃げる馬は前回の映像だろうか。 さゆりの祖父の壊れっぷりが凄い。 ナマハゲ、乞食仙人、シンタの父の系譜を引くキャラである。 しかし最後はさゆりを守るため命を落とした。 彼もまた妄執に取り付かれた犠牲者だったのであろう。 因みに老人を演じていたのは厳金四郎氏。 オクスターに食われた老人役も演じていた。 両者は動物の恨みの犠牲になるという点で共通している。 さゆりちゃんのことを考えてたのかと突っ込まれる北斗。 さゆりちゃんがかわいかった云々。 今聞くとまるで北斗がロリコンのよう。 今こういうこと言うと、洒落にならない気がする。 老人が「家屋敷さえ取られなければ」と言うと、「仕方ないわ。お金を借りたんだから」と健気なさゆり。 両親もなく友達もショウベイだけというあまりに悲惨な境遇である。 最後竜隊長の姉に引き取られて本当によかった。 でも、心の傷(トラウマ)はなかなか消えないだろうな。 今回も題材は動物の呪い。 それに人間も絡めて石堂氏得意の展開になっている。 サンショウオを絶滅から守ろうとする老人の態度は正しい。 しかし農薬や除草剤を使用する村人たちを責めることは出来ないであろう。 みんな生きていくために必死なのである。 そのため便利なものを使うのは時代の流れであり仕方ない。 そして仮に村人が間違っていたとしても、村を破壊することは決して許されないのである。 結局老人はショウベイに殺された。 動物の側から見れば、自分を洞窟に閉じ込める老人も同じ人間であり、敵だったのであろう。 せめてもの救いはエースがショウベイを殺さなかったことか。 しかし洞窟に閉じ込められては、もはや絶滅は免れない。 人間の業の深さを改めて感じさせるエピソードであった。 |