データ 脚本は石堂淑朗。 監督は筧正典。 ストーリー 人工衛星ジュピター2号が黒い雲に包まれその姿を消した。 TACはジュピター2号が日本の上空を通る夜半にかけて警戒を強化する。 その頃星馬鹿と友達から言われているユタカ少年はジュピター2号を探すべく、手製の天体望遠鏡で星を観測していた。 すると赤い火の玉を発見。 それはTACのレーダーにも捉えられ、ジュピター2号と断定されるが、爆発と同時にレーダーから反応が消えてしまう。 一方ユタカは爆発したジュピター2号がガスタンクの形に変化し他のガスタンクと同化するのを目撃する。 ガス会社の守衛をしていたユタカの父はすぐに会社と警察に連絡。 しかしジュピター2号はガスタンクと同化していたため警察は取り合ってくれない。 超獣の仕業ならTACが来てくれるかもしれないと思ったユタカはTACに連絡する。 消えたジュピターにつき話し合っていたTACはその連絡を受け、北斗吉村を現場に派遣。 吉村は探知機を使い、ガスタンクに生物反応があるのを確かめる。 北斗は本部に「ジュピターに超獣の卵が産み付けられていた」と報告。 隊長は山中を本部に待機させ現場に駆けつけた。 ガスタンクが近くにあり、迂闊に攻撃できないことから今野はガス会社の社員とともにガスを安全に抜くことにする。 しかし安全に抜けるはずのガスが漏れ出してしまった。 それが超獣の変身したガスタンクに吸収されていく。 本部の山中にスペースで出動しミサイルを撃つよう指示する隊長。 しかしガスタンクにミサイルが命中すると、中から超獣が出現した。 体内をガスで充満させたガスゲゴンを迂闊に攻撃できないTAC。 自分の家が踏み潰され望遠鏡を壊されたユタカは「TACが来なかったら超獣は卵から出なかった」とTACを責める。 付近の住民もTACの無力を責める。 少年は「超獣を空に持ち上げてから倒せば火事にならない」と言う。 本格的な攻撃はガス中和剤を用意してからにし、TACはとりあえず超獣に冷凍弾を撃ち込む。 しかし超獣は自ら発熱し、冷凍はすぐ解けてしまった。 続けてTACはファルコンでガス中和剤を散布する。 すると超獣も少し大人しくなった。 しかし北斗のアローは超獣の攻撃で墜落。 北斗はエースに変身する。 ガス中和剤の効力が消え、光線が使えないエースは大ピンチに。 エースのピンチに山中はTACレーザーで超獣を撹乱。 ファルコンもエースを援護する。 エースはガスゲゴンの隙を捉え背後に回った。 そのままガスゲゴンを持ち上げ宇宙空間まで飛んで行く。 そして宇宙空間でその手を離すと、ファルコンは光線を発射。 ガスゲゴンは宇宙空間で大爆発した。 新しく望遠鏡を作ったユタカにレンズをプレゼントする北斗。 それを覗いたユタカは北斗を見て「あっ、ウルトラマンエースだ」と言う。 「大人をからかうもんじゃない」という北斗。 エースとTACの活躍で平和な日常が再び取り戻された。 解説(建前) ガスゲゴンは何者かであるが、単なる宇宙怪獣か、それとも超獣か。 ジュピター2号に産み付けられた卵(もしくはガスゲゴンの幼生)が成長したということは、その親もしくは宇宙人の関与が疑われる。 しかしあの黒雲に親がいたとは考えにくいので、宇宙人もしくはそれを超える何者かが関わっていた可能性が高いであろう。 とするとやはりヤプール残党の仕業と考えるのが1番素直である。 今まで度々出てきたが、黒雲と超獣の繋がりは深い。 ガスゲゴンを地球に送り込んだ目的が地球制服というよりも地球破壊、もしくは復讐と考えられることからヤプール残党の仕業と考えるのが最も自然であろう。 破片の仕業にしてはやることが高度すぎるし、地球の外での出来事だけにちょっと難しい気がする。 ここではヤプール残党説を採用しておく。 超獣の卵は何故ガスタンク状になったのか。 これは所謂擬態の一種ではなかろうか。 超獣の卵から生まれた幼生(もしくは最初から幼生だったもの)がジュピター2号の中のエネルギーを養分とし、その外壁をガスタンク状に変えて擬態した。 そしてタンクから漏れ出るガスを吸い取り急成長したものと考えられる。 ガスを吸収して巨大化させるとはヤプールも考えたものである。 感想(本音) 爆発させたら大惨事になるということで迂闊に手を出せないガス超獣。 なかなか面白い超獣で、TACが色々作戦を立てて戦う展開は久方ぶりである。 超獣の生態が話の中心になっている点、同じ石堂作品でもマグネドン辺りと共通するかもしれない。 割と正統派な作品である。 今回も住民やガス会社から責められるTAC。 これも石堂作品にはお馴染みで、石堂作品では北斗個人よりもTACという組織に対する無理解という点が強調されている。 とは言え、普段から街中に派手に飛行機を墜落させるTAC。 これは自業自得なのでは。 今回も吉村は探知機片手に超獣を発見していた。 結構いい加減だった梶に比べて吉村は実地に調査して結果を出している。 所詮梶は科学者。 理論に偏りすぎて自ら調査する姿勢に欠けていたのだろう。 生物及び超獣に関しては吉村の方がエキスパートのようだ。 ところで吉村が業績を上げるようになってから、少し吉村の態度がでかくなってきたように感じるのは私だけだろうか。 人間自信をつけたら変わるものである。 ガスを抜き取るシーン。 「安全に抜き取るはずが」とあるが、安全に抜き取るってどうやるのだろう。 私はガスには詳しくないのでその辺りよくわからない。 普通に考えたらガスが外に漏れ出すのはとても危険だと思うが。 その辺りもう少し説明が欲しかった。 ガスが漏れ出しているにも関わらずミサイルを撃ち込むTAC。 引火して大爆発したらどうするんだ。 その後は慎重だっただけに疑問が残る所である。 ガス中和剤は何気に強力。 どういう成分で出来ているのだろう。 ところで超獣用に用意していた兵器はシルバーシャークのようだったが、説明がなかったのではっきりとはわからない。 出来れば一言触れて欲しかった。 ジュピター2号が消息を消した時の会議。 「燃え尽きた」という美川に対し、「燃え尽きるには大きすぎる」と山中。 この辺り山中の現実主義というか常識人的な性格がよく出ている。 しかしこういう時今野は本当に影が薄いな。 軽口ばかり言って北斗に睨まれたり、すっかりそういうキャラのようだ。 最後少年はどこの家に住んでいたのだろう。 ガスゲゴンに踏み潰されたはずでは。 どこか親戚の家かなんかに居候させてもらっているのだろうか。 しかしああいう災害で家を潰された人はその後どうするんだろう。 政府が何らかの援助をするのか。 ああいう世界だから何らかの法整備はなされているのかもしれない。 あと、本編の後「このドラマはフィクションであり云々」という字幕がビデオに収録されている。 これは「あのガス会社は実在しないよ」という意味なのだろうか。 それともガスに関する間違った認識を伝えるおそれがあると配慮されたのだろうか。 この話だけなのでとても違和感があった。 今回も初期の路線に戻ったやや大人っぽい話。 ダン退場でまた雰囲気が変わってきた。 中期の少年路線が難しいと見て戻してきたのか、個人的にはエース終盤は割りと好きである。 北斗もTACの一員として漸く溶け込めた感がある。 チームのムードも良い。 帰りマンの終盤もそうだったが、エースも個人の物語から全体の物語に移行してきたようだ。 ただ、市川作品では今まで描かれてなかった北斗個人が直接描かれることになる。 そう考えると中期も他者を通した北斗ということで意義を見出すことが出来そうだ。 紆余曲折を経たドラマがここに来て漸く完成を見ようとしている。 |