神秘!怪獣ウーの復活


データ

脚本は田口成光。
監督は上野英隆。

ストーリー

雪深い峠。
父と娘の親子2人が山の祖父の宿に向かって道を急いでいた。
すると突然不気味な音がしたかと思うと、山から超獣が出現。
「小雪、お前は谷を下りて逃げるんだ」。
父は自らおとりとなって娘を逃がそうとする。
しかし谷を下りようとした娘は転んでしまい、超獣に見つかってしまう。
銃を撃って自分の方へ超獣を引き寄せる父。
父は超獣の攻撃を受けとうとう谷底へ転落してしまった。
娘は谷を下りる途中、倒れて気を失ってしまう。
超獣を目撃した麓の村人たちは「神様だ」と言いみなその場を逃げ出す。
北斗はダン姉弟とともにその村にスキーをしに来ていた。
ホテルに戻った北斗らは「ダンくらいの孫がいる」という老人と知り合う。
そこへ帰ってきた村人達は「山の神様を見た。神様は超獣かもしれない」と言う。
それを聞いた北斗はTACの隊員であると名乗り、すぐ調査に行こうとする。
しかし既に日が暮れていたため、雪崩の危険があるとさっきの老人に止められ、翌日老人の案内で谷を調査することにした。
翌日谷に入った北斗は雪の中に娘が埋まっているのを発見する。
娘はまだ息があった。
娘はうわごとで「お父さん」と言う。
しかしそれ以上の捜索は危険であったので2人は娘を連れて宿に引き上げた。
宿に帰った2人は娘を寝かせて、話を聞いてみる。
北斗が名前を聞くと、その娘は小雪と名乗る。
それを聞いた老人はその娘が自分の孫であることに気づく。
娘によると、父親は超獣から自分を助けようとして行方不明になったという。
超獣の話を聞いた北斗はそれを本部に報告。
隊員らがファルコンとスペースでやって来る。
TACは空から谷を調査するが超獣の足跡すら見つからなかった。
子供と村人が見たというと、訝しがる山中ら。
吉村も「北斗隊員が見たわけではないんだな」と言う。
少女の話を聞いた隊長は、とりあえず目撃者に会うことにする。
娘は父さんとの思い出の歌を歌う。
その歌を聞いて堪らなくなった香代子は部屋を出て行く。
娘に父の名を尋ねる北斗。
老人は娘を北斗に任せて出掛けようとするが、娘は「ついて行く」と言い2人は山に入る。
それを追う北斗。
留守番のダンからそのことを聞いた竜は山中今野をスペースで、自分達は雪上車で北斗らを追うことにする。
北斗は谷で父の名を呼ぶ2人を見つけた。
2人は谷底に埋もれてる父を発見。
しかしその時超獣が出現してしまう。
逃げ遅れて超獣に襲われる2人。
その時父の死体が消え、その場に怪獣ウーが現れた。
父は怪獣ウーとして復活したのである。
2人を助けるため超獣と戦うウー。
しかしウーは超獣の前に崖下に突き落とされてしまう。
なお暴れる超獣に攻撃を仕掛けるTAC。
ピンチになった北斗はエースに変身。
2人を助け、超獣に挑みかかる。
しかし雪の中苦戦するエース。
スペースの援護もあり、漸くメタリウム光線でとどめを刺した。
北斗は崖を上り隊員たちの所へ。
小雪が「お父さ〜ん」と呼びかけると、ウーは動き出した。
ウーは生きていたのだ。
「お父さんが守ってくれた」と娘に言う祖父。
雪の中に消えて行くウー。
このような悲劇が繰り返されないよう、超獣全滅を誓う隊員たちであった。

解説(建前)

アイスロンは超獣ということでヤプールの破片に何らかの関係があると思われる。
しかし詳細は不明。
元々山に住んでいた怪獣がパワーアップしたのかもしれない。

祖父は何故孫の顔を知らなかったのか。
これは暫く会ってなかったか、初めて会うかのどちらかだろう。
父と祖父は何かの事情で仲違いしてたのかもしれない。
父は猟銃を持っており、他の山で猟師をしていたようだ。

ウーは何者か。
これは死んだ父親の魂に山の精が取り付いたのではと考えられる。
そういう意味ではこちらこそ超獣と言うに相応しい存在かもしれない。
娘が雪の中生きていられたのもあるいは山の精の御加護かも。

北斗はウーを知っていた。
これはウルトラの知識か、TACで得た知識か。
事前にTACのデータベースで飯田山のことを調べていたのかもしれない。
しかし地元の人もウーを知らないようだし、前のウーは何年前の話だったのか。

感想(本音)

この辺りに来るともはや超獣と怪獣の区別がつかない。
単に怪獣の呼び名が超獣になっただけのようだ。
あまり気にしてはいけないだろう。

今回の脚本は田口氏。
地味な話だが構成に破綻はなくよく出来た脚本。
田口氏お得意の子供を中心に据える作劇で親子の悲劇を上手く描いている。
最後ウーが生きており、救いを残すのも田口流か。
監督はウルトラシリーズ初登板の上野英隆。
無難なカメラ回しではあるが、時折画面が赤くなる等の演出が面白い。
全体的にゆったりとした雰囲気で山の時間の流れを上手く表現していた。

その他について。
村の人の話や娘の話を信じない吉村。
あくまで科学的根拠を重視する吉村の姿勢がよく表れている。
さり気ないが、人を重視する北斗との差が出ている所だろう。
「山の中で銃なんて撃つから雪崩が起きたんだ」と言う割りに派手にスペースで爆撃する今野。
雪上車で谷に入った隊長の立場は?

今回もダンはただの北斗の友達の少年。
さすがの田口さんも毎回ダンを活躍させるのは難しく今回はやや放置気味だった。
そしてこの頃後番組ウルトラマンタロウの制作が決まり、ダンの運命は風前の灯となる。
小雪の演技はやや棒読み。
歌も単調でそこら辺が惜しい。
アイスロンを倒した後雪でアイスロンの体を埋めるエース。
葬ってやったということだろうが、イマイチ意味不明である。
わざとらしく崖下から現れる北斗。
北斗なりに正体がばれないように色々工夫をしているようだ。

ツッコミどころが少なく良く出来た話。
その分面白みに欠ける嫌いはある。
だが父がウーとして復活する場面や娘が歌を歌う場面等、親子の情愛を上手く描いており泣かせるいい話でもある。
無難に作品をまとめている辺り、田口氏がメインを担える脚本家に成長したことを如実に示す一本であろう。

田口氏のエース脚本はこれで最後。
これ以降田口氏は新作ウルトラマンタロウのメインライターとしてそちらの制作に携わることになる。
大人向けの人間ドラマという点では物足りない田口氏だが、それはあくまで大人から見た評価。
本来子供向けであるウルトラシリーズにおいて、タロウの人気は氏の実力を裏付けるのに十分であろう。
かく言う私も子供の頃はタロウが1番好きでした。


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