データ 脚本は石堂淑朗。 監督は鈴木俊継。 ストーリー 神社でかくれんぼをする子供達。 ダンが友達のシンタと一緒に社に入るとシンタの父が何かの像に向かって祈祷していた。 父はカイマ様というその像に獅子舞を馬鹿にした世間の連中に天罰を与えるよう祈祷していたのだ。 シンタによると父は近頃何処かからその像を拾ってきたという。 ダンはシンタと一緒にシンタの家の小屋に隠れる。 小屋の中の獅子舞に驚くダン。 シンタの父は獅子舞師であったが正月に酔っ払いに殴られ怪我をし獅子を舞えなくなったことから世間を恨んでいた。 もう獅子舞は舞わないという。 ダンは獅子が泣いているというが、シンタはそんなわけないと言い獅子の面を叩き始める。 シンタはそれを被り超獣ごっこをしようと言い出す。 やめた方がいいと言うダン。 そこへパンサーで北斗と美川がやって来た。 北斗によると、この辺りに超獣の反応があるから調査に来たと言う。 獅子を戻しにいくシンタ。 しかし顔から獅子が取れない。 苦しむシンタ。 獅子の目が光る。 そこへ父親が駆けつけた。 その時またしても獅子の目が光った。 父親は催眠状態になり太鼓を叩き出す。 すると獅子舞が巨大化し、シンタは中に取り込まれてしまった。 美川が本部に連絡すると、本部でも異常なエネルギーを観測していた。 子供達を避難させようとする北斗と美川であったがダンは「僕はウルトラ6番目の弟だ。シンちゃんが戻ってきてないのに僕だけ逃げるわけには行かない」と言う。 ダンを残し他の子供達を美川に避難させる北斗。 太鼓に操られてますます暴れるシシゴラン。 北斗は銃で超獣を撃とうとするが、「シンちゃんが中にいる」とダンに止められる。 「このままでは街が全滅してしまう」と北斗。 北斗は太鼓の音に気づき、その音が聞こえる方を調べに行く。 ダンは「今攻撃すると北斗さんが危ない」と言い、美川もそれを隊長らに伝える。 着陸して怪しい太鼓の音を調査するTAC。 その頃北斗は太鼓を叩く男を見つけ後をつけていた。 北斗はその男が超獣を操ってるらしいと報告する。 神社に逃げ込む男。 すると社から巨大な超獣が出現した。 「カイマ様が願いを聞き届けてくれた。獅子舞を馬鹿にする奴を叩き潰せ」。 北斗は地上から攻撃するが、カイマンダとシシゴランの猛攻を受けエースに変身する。 エースは2体の超獣に挟み撃ちにあい苦戦する。 何とかグリップビームでカイマンダを爆破するエース。 しかし腹の中にシンタがいるシシゴランには迂闊に手を出せない。 火炎や怪光線にピンチに陥るエース。 その時竜らは太鼓を叩く男を見つけ、その太鼓を銃で撃ち男を正気に戻す。 それを見たエースは反撃。 最後はメタリウム光線をシシゴランに浴びせ、シンタは無事助け出された。 北斗はシンタを抱き上げ正気に戻った父と再会させる。 喜び抱き合う2人。 お礼に基地内で獅子を舞う父。 仲睦まじい親子の姿を微笑ましく見つめる北斗であった。 解説(建前) シシゴランは何者か。 これは邪心カイマがシンタの父の願いを聞き入れ、ただのお獅子に生命を吹き込んだものと考えられる。 そしてお獅子は自らシンタの父を操り、太鼓を叩かせることによりエネルギーを得て巨大化した。 カイマがカイマンダとして超獣化し倒された後もまだシシゴランが活動していたのは、お獅子そのものに生命が宿っていたからだと解釈できる。 そして父が正気になり太鼓を叩くのをやめたためシシゴランのエネルギーは減少し、威力をセーブしたメタリウム光線によりとどめを刺された。 シシゴランは主にシンタの父の怨念をエネルギーにしていたので、それが無くなって元に戻ったものと考えられる。 もしかしてカイマ像がヤプールの破片で出来ていたとも解釈できないではないが、これはナマハゲ同様日本の八百万の神の一派ということでいいのではないか。 もしかするとヤプール自体、そういう一派なのかもしれないが。 感想(本音) 比較的地味な話。 内容は石堂さんらしい脚本で堅実な仕上がりとなっている。 アニミズムを信仰する石堂氏。 物に生命が宿るパターンはバッドバアロンと同じ発想だ。 この後もギーゴンで同じように物が超獣化する脚本を書いている。 今回話の内容は少ない。 獅子舞が超獣化しそれを操るシンタの父を北斗が追いかけるというもの。 これは前回のパンダ泥棒を追いかける展開と似ている。 下手をすれば単調になりがちな話にも関わらずそれなりに飽きない展開になっているのは監督の工夫の賜物か。 エース初登板の鈴木監督のセンスが光る内容となっている。 まず少年や北斗のアップでアングルが斜めになっていたりする。 そしてシンタの父のアップも様々な角度から撮られており、動きは少ないがカメラワークはなかなか凝っている。 父の狂気を上手く演出していたと思う。 あと街のシーンではスモークを炊くなど、破壊されている街の臨場感を出すのに成功していた。 唯一気になったのは父とシシゴランの合成のチャチさか。 しかし全体的に薄目のシナリオを上手く補って、内容の少なさが気にならない仕上がりになっている。 前回といい鈴木監督は非常にいい仕事をしている。 以下ツッコミを。 ダンは獅子舞で遊ぶ子供達を注意したり、相変わらず大人びた視点で物事を見ている。 やはり両親がいないことから、少し精神的に大人なのだろうか。 まあ、北斗に出会う前は無茶していたから単に成長したとも考えられるが。 いずれにせよ子供版北斗と言えなくもない。 今回ダンは「ウルトラ6番目の弟」を名乗り、友達を助けようと北斗と行動を共にする。 ただウルトラの星の話は出てこなかった。 別に大したことはしていないので問題にならないのかもしれないが、この設定、どうも置き去りになっている感はある。 一応ウルトラ6番目の弟の設定を使おうとした石堂氏の努力は認めるが、この設定、下手すりゃ合体変身より使いにくいのではないか(ただの危ない人に見えてしまう)。 このまま最終回まで続いたらどうなっていたことか。 そう考えると夕子に続くダン退場も仕方なかったのかもしれない。 今回吉村は本部から北斗らに指示を出すという偉そうなことをしている。 バッドバアロンの時もそうだが、吉村は超獣の鑑定を担当する地位にあるのだろう。 前回も北斗は気球を超獣と見抜けなかったが、今回もお獅子を超獣と見抜けなかった。 しかしこどもたちが獅子舞で遊んでいるだけでそれを超獣と判断するのはほぼ不可能なので、今回の北斗や美川に落ち度があったとは言えないであろう。 この辺りバアロンの時も石堂脚本だったので連続性が感じられ面白い。 最後の基地内の獅子舞のシーン。 誰が照明を当てていたのだろう。 超獣の集中攻撃を浴びる北斗。 見ていてかなり危ない撮影に見えるが? 今じゃあまり見られないシーンである。 「子供達は?」と聞かれ「安全な所に避難させた」と美川。 あの街の何処に安全な場所があるんだよ。 シシゴランに思いっきりメタリウム光線を浴びせるエース。 中のシンちゃんの立場は? 結構解釈に苦しむが、今回は人間の恨みが物に宿り超獣化するというもの。 初期のガランも人間の怨念が乗り移っていたが、あれはあくまで生物である超獣に乗り移っており、無生物に宿ったのは今回が初めてではないか。 石堂脚本はこのように人間の怨念が生物、無生物に宿るパターンをこれからも描き続ける。 そしてそれは2期ウルトラ後期の1つの特色となった。 ここに人間ウルトラマンだけではなく、人間怪獣も確立したといえるであろう。 そしてそれはドラマ志向の強い2期ウルトラには必然的な展開ではなかろうか。 それでも基本フォーマットは守られており、ウルトラシリーズとして違和感はそれほどない。 もちろん作品の出来の良し悪しは個々の脚本次第だが、ウルトラシリーズがこのように展開したこと自体は悪いことではないであろう。 |