データ 脚本は石堂淑朗。 監督は山際永三。 ストーリー クリスマス。 北斗はダンと香代子と一緒に街で孤児院の子供たちに渡すプレゼントを買っていた。 孤児院の先生であるゆかりと香代子は友達同士だという。 3人が孤児院に着くと庭には大きな雪だるまが。 その発泡スチロールで出来た雪だるまは朝に誰かがプレゼントとして置いて行ったものだという。 北斗たちは孤児院の子供に特別ゲストとして紹介され、子供達に買ってきたプレゼントを渡す。 お返しに子供達は劇を披露。 みんなでエースの歌を歌ってる最中、ゆかり先生は空がいつもより明るいのが気になり窓の外を見た。 すると当然庭の雪だるまが割れ怪しい怪物が。 その怪物は目から光を放ちゆかりは目が見えなくなってしまう。 その時ダンも天窓からサンタクロースが空を飛んでいるのを目撃する。 するとサンタは煙突から孤児院の中へ。 ゆかりに他に慰問予定の人がいないと聞き北斗はそのサンタを怪しがる。 「あなたは何者ですか」と北斗。 しかしゆかりは「その方は悪い方じゃありません。目が見えないから余計にわかります」と言う。 しかしダンは「サンタが空から降ってきて先生の目を見えなくした」と言う。 その時北斗の元にTACから連絡が。 街で怪光線を浴びた人が次々に目が見えなくなるという事件が起きているという。 そしてその光が超獣のものとわかると、TACは空から出撃した。 攻撃に参加しようと出て行く北斗にサンタは「北斗…君。頑張りなさい」と言う。 TACは光線防御のグラスを掛けて超獣を攻撃するが、超獣スノーギランは怪人ナマハゲに煽られますます暴れ回る。 ナマハゲの主張は、八百万の神を奉らず異国の神を崇めてクリスマスを祝う日本人に制裁を加えるというものであった。 「叩き壊せ〜」とスノーギランを鼓舞するナマハゲ。 TACもスノーギランの放つ冷凍ガスの前に視界がゼロになり脱出を余儀なくされる。 脱出した北斗は「ウルトラタッチ」とエースに変身。 しかしエースはスノーギランの冷凍ガスに苦戦し、メタリウム光線も通用せず大ピンチに陥る。 「踏み潰せ〜。西洋かぶれの奴を倒すのだ〜」。 「トドメだ〜トドメを差せ〜」とナマハゲ。 遂にエースは力尽きる。 ますます暴れるスノーギランは町の人たちに怪光線を浴びせ次々と目を見えなくさせる。 地上に下りた隊員たちは町の人の避難を誘導。 逃げ遅れた孤児院の子供達を助けに孤児院の中に入る。 しかし子供たちは避難しようとしない。 「ゆかり先生と一緒に死ぬんだ」と子供達。 説得する山中ら。 しかし子供達は先生と残ると言って聞かない。 「その孤児院をぶっ潰すのだ。ガル〜」とナマハゲに言われ孤児院に迫るスノーギラン。 おとりになって子供達を助けようとする山中ら。 その時サンタが「私に任せなさい」と山中らを制止する。 「おじさんはいい人なの悪い人なの」とダン。 するとサンタは巨大化し、ダンの目にはサンタの頭に角があるのが見える。 「ウルトラの父だ」とダン。 「あれはウルトラの父ではない」と山中。 「あの赤いのは何者じゃい」とナマハゲ。 「エースよくじけるな。立ち直って超獣を倒すのだ」と言いエースにエネルギーを与えるサンタ。 竜も「ウルトラの父だ」と言う。 スノーギランを鼓舞するナマハゲに対して光線を浴びせるサンタ。 その姿はウルトラの父の姿に変わっていた。 再びメタリウム光線を浴びせるエース。 今度はスノーギランを倒し、ウルトラの父に礼を言う。 サンタの姿に戻った父は孤児院の子供たちにプレゼントを渡す。 「目は私じゃ治せない。そうだそれがTACの諸君へのプレゼントになるかな」と言いサンタは姿を消す。 外に出たダンらは屋根の上にいるサンタを見つける。 空から橇を呼び寄せるサンタ。 すると橇の上には月に帰った南夕子の姿が。 「夕子」と北斗。 夕子が手を挙げると眩しい光が辺りを照らす。 するとゆかりの目は見えるようになった。 次々に町の人の目を治す夕子。 サンタはウルトラの父の姿に戻り、夕子を乗せた橇を走らせる。 「ウルトラの父はいつでも我々を見守っていてくれる」。 聖しこの夜を合唱する子供達に手を振る父と夕子。 北斗と竜はにこやかにそれを見送るのであった。 解説(建前) まずスノーギランは何者か。 例の如くヤプールの破片が作り出したものとも考えられるが、そうなるとナマハゲの存在がよくわからなくなる。 これはやはりナマハゲが作り出した超獣と考えるべきだろう。 ナマハゲ自身ヤプールの破片に日本の八百万の神が乗り移ったとも考えられるが、あまりにヤプールの連鎖を広げるのも何なのでナマハゲはやはり怪人にしておく。 ナマハゲは何故あの孤児院を狙ったのか。 北斗が来るのを知っていたのか。 しかしそこまで知ってるとは思えないので、やはり単なる偶然と考えるべきだろう。 クリスマスパーティをしていたから狙われたものと考えられる。 サンタが魂だけとはどういうことか。 これは難しいが、ウルトラ一族にはそういう態様の変身もあるということなのだろう。 サンタは空を飛んだり消えたり、セブンの人間体であるモロボシダンとは明らかに性質が違う。 あるいは誰かの霊魂に乗り移ったということかもしれないが…。 子供達は何故「今だ。変身。北斗と南」と歌ったのか。 これは不可解だが、こう解釈するしかあるまい。 あの世界ではエースをモデルに子供向けヒーロー番組が作られていた。 そして偶々北斗と南という2人の主人公が出ており、2人で変身していた。 実際の北斗と南をモデルにしたかは定かではないが、エースをモデルにしたヒーロー物があっても不思議あるまい。 北斗は35話でエースのバッジを子供に渡していたが、あれはテレビ番組のキャラクター商品とも考えられる。 もしかして自分がモデルになったお礼にテレビ局から貰ったものかもしれない。 苦しいがそんなところにしておく。 北斗はサンタの正体を見抜けなかった。 北斗の状態ではあまりエースの能力は使えないらしい。 それともまだエースとの一体化が進んでないのか。 郷秀樹は宇宙人をすぐ見抜けるようになったので、修行がまだ足りないのかもしれない。 エースの2度目のメタリウム光線は何故効いたのか。 これは1回目が寒さでエネルギーが中途半端になったのだと考えられる。 2度目はそれを反省して十分貯めたからエネルギーが足りたのであろう。 香代子たちは貧乏のはずなのに、あれだけのプレゼントを買うお金は何処にあったのか。 全部北斗の金なのか? これは友達もしくは心ある人から集めたお金で代表してプレゼントを買ったのではないか。 香代子はボランティアをしていることから自分のお金とは考えにくいであろう。 夕子については完全に月星人の超能力を取り戻したということで(覚醒)、何でもありということにしておく。 あの白い服は宇宙服の代わりにもなるのだろう。 子供たちが夕子を見て「南隊員だ」と言ったことから夕子は結構有名らしい。 月に帰ったTAC隊員として子供向け雑誌にでも載ったか? あるいは夕子が月星人であるということを元にエースのテレビ番組が作られたのかもしれない。 感想(本音) 非常に説明に困る難解な作品だが、それは単に子供向けクリスマス娯楽作品であるため。 あまりそういう堅苦しいことは考えずに見るのがこの作品の正しい鑑賞法であろう。 私も久々に見たときは「何じゃこりゃ」と思ったものだが、もう一度見直すとなかなか面白い。 怪人ナマハゲが超獣を操りTACがそれを迎え撃つ。 こういう基本フォーマットに忠実な作品がここ何話見られなかったので少しカタルシスを感じる。 そしてエース登場、父登場。 最後に大サービスの夕子登場。 娯楽作品としてはかなりの出来では。 同じ石堂、山際コンビはタロウでもモチロン編を手掛けているが、やはりこちらの方がバランスがよく出来もいい。 1期ファンには不興を買いそうな作品ではあるが、2期ファンにとっては十分楽しめる内容になっている。 以下細かい点を。 まず最初の街を買い物するシーン。 山際監督らしい映像センスが光っている。 BGMも良く、楽しいクリスマスの街並みの雰囲気がよく現れている。 と同時に少し不気味な雰囲気もあり山際さんらしさがよく出ていると思う。 今回、香代子の荷物持ちをやらされる北斗。 北斗がダンに「ゆかり先生が美人」と言われて嬉しそうにしていると香代子が焼きもちを焼いていたことからも、まるで2人は恋人同士かのような演出になっている。 少なくとも香代子は北斗に気があるのだろう。 今回ダンは「北斗さん」と言っている。 監督によって呼び方が変わるのか。 ダンが「ウルトラ6番目の弟」と紹介されると場が盛り上がる。 しかしその紹介は馬鹿丸出しだぞ。 子供達の劇のシーンはドタバタコントになり何とも楽しいが、客席の子供達のアップは逆に不気味な雰囲気を出している。 これは山際さん独特のセンスだろう。 そう考えると、エースの歌も確信犯に思えてくる。 香代子がゆかりに「あなた偉いわ」と言うが金貰って仕事してるならそれほど偉くないと思うが。 よほど安月給なのか。 遮光グラスをつけるシーンでファルコンの前の座席だけでなく後部座席まで映されている。 こういうファルコンを全体的に撮るシーンは珍しい。 よく撮れていると思う。 超獣スノーギランはエースを倒すくらいでなかなか強い。 しかし劇中みんなスノギランと言ってる気がするが、どっちが本当なのだろう。 撮影後スノギランじゃわかりにくいので、わかりやすく変えたのだろうか。 あと今回は夜のシーンで画面が全体的に暗い。 しかしクリスマスの雰囲気は出ており悪くないだろう 今回は何と言っても怪人ナマハゲのキャラに尽きるだろう。 石堂氏得意の三下やくざ口調で完全に頭がおかしくなったとしか考えられない言動。 ヤプールの破片にでも当たったかというくらいだ。 元は大人しい1人の神だったのかもしれない(んな馬鹿な)。 「ウホホ〜。ハグハグハグ」「孤児院をぶっ潰せ〜。ガル〜」「あの赤いのは何者じゃい」とかもう最高。 完全にイカレタとしか思えないその壊れっぷりは最後に父の光線にやられるまでノンストップで笑いを提供してくれました。 エースの敵キャラでもインパクトはトップクラスですね。 因みにナマハゲと言えば、新マンのテロチルス編にも出てきました。 これも山際さんが監督だったので何か関係あるのでしょうか。 あと個人的にナマハゲの主張自体は悪くないと思います。 竜隊長が「ウルトラの父だ」と言うと、救急隊員が「頭を打たれましたか」。 ダンが「ウルトラの父だ」と言うと、美川が「かわいそうに。エースが負けたショックで頭がおかしくなったのね」。 何だか凄い言われようである。 竜隊長は角まで見えてないみたいなので、何となくそう思ったのでしょうね。 ダンはさすがウルトラの星が見えるだけはあります。 サンタに向かって「サンドイッチマンのおじさん」と言う山中(訂正今野でした)。 夢がない人にウルトラの父は見えません。 さすが現実主義者。 久々の夕子登場。 しかし何だか勝手が違うのか表情が硬いような。 月星人夕子もかわいいのですが、個人的にはやっぱり夕子は隊員服がいいですね。 しかし夕子を見つめる北斗の心情や如何に。 見送る目には万感の思いが込められていたので、やはり複雑な心境なのだろう。 香代子と仲良くしてるのがばれてないかヒヤヒヤしてたりして。 因みに変身の「ウルトラターッチ」は夕子を意識したものでしょうね。 山際さんは次回もウルトラタッチを使うので、かなり夕子に配慮してるのがわかります。 まあ今までなかったことになっていた夕子の設定が公認されたということでしょうか。 夕子を惜しむファンの声が届いたのでしょう。 あと今回「めくら」という言葉が2回ほどカットされてました。 今回は完全に娯楽作品。 孤児院中心に舞台劇のように話が進むのも何とも異色である。 また子供達がエースの正体を知っていたりと無理な点も多い。 しかしこれはこの話がエースの中に実際の子供達がゲスト出演してると考えれば全て辻褄が合う。 つまりあくまでそういうクリスマスプレゼントとしての特別企画と考えるべきであろう。 制作側もそういう意図で話を作ってるものと思われる。 賛否両論あろうが個人的には「あり」な話。 深いことを考えずに童心に帰って見るべき作品である。 |