データ 脚本は長坂秀佳。 監督は志村広。 ストーリー タンカーが消息を絶つ事件が多発していた。 事件の数日後アローで海上をパトロールしていた北斗は小舟で漂流する少年を見つけ助け出す。 少年はゆうじといい、母は交通事故で亡くなり父もタンカーとともに行方不明で今は姉と2人暮らしをしていた。 北斗はゆうじを家に送りそこでゆうじの姉ナミコに会うが、ナミコは「ゆうじが沖に行くはずがない」と言い北斗をすぐに帰そうとする。 さらにナミコはゆうじを遊びに誘いに来た近所の子供達も追い返した。 不審に思った北斗は近所の子供達に事情を聞く。 するとゆうじ姉弟は父のタンカー事故以来おかしくなったという。 北斗は浜辺で1人貝殻を集めるゆうじを見かける。 北斗がゆうじに話しかけるとゆうじは「姉ちゃんが貝殻を1000枚集めると父ちゃんが帰ってくると言うから毎日拾い集めている」と言う。 海に浮かぶという貝殻に不審を抱く北斗。 ゆうじを迎えに来た姉のナミコは北斗にさっきのことを謝る。 しかし北斗に「ゆうじ君に父さんが死んだことを隠しているのか」と聞かれ、「ゆうじに聞かれて困って嘘をついたが、自分も父が死んだのは信じたくない。ゆうじにはなおさら知られたくない」と言う。 「どんなことがあろうと子供を騙すのは反対だ」と言う北斗だが、ナミコは「構わないでください」と言うことを聞かない。 基地に帰った北斗は隊長に休暇を願い出るが、「事件が解決してないのに子供のために休むとはぶったるんどる」と山中に一喝される。 しかし隊長は「TACは子供の味方だ。1人の子供から生きる勇気を奪ってしまう何かがあるとすればそれはTACの敵だ」と休暇を認める。 北斗はダンを連れゆうじの家に行きゆうじを遊びに連れ出す。 それを知ったナミコは北斗を咎める。 しかし逆に北斗は「このままじゃゆうじ君は駄目になる。君のおセンチのために弟を犠牲にするのはやめにしないか」と反論する。 そこへダンたちがやってきた。 「暖かい風が吹いたら貝殻が採れる」とゆうじは海岸へ向かったと言う。 それを聞いた北斗は貝殻が超獣のものと直感し本部に連絡。 ゆうじを探しにボートで海上へ出た。 そこへファルコンも飛んで来るが、超獣が現れタンカーを襲う。 北斗は近くにいたゆうじを必死で助け、ゆうじに父さんが死んだことを教える。 姉に騙されていたと知ったゆうじは超獣の鱗である貝殻を持って海に向かう。 そして「それを研究すれば超獣の弱点がわかるかもしれない」と言う北斗の静止も聞かず貝殻を海に投げ捨てた。 さらに部屋に帰ったゆうじは部屋の中のものを投げ散らかす。 しかし壁から落ちた父の制服を見てゆうじは物を投げるのをやめ制服にすがって泣き始めた。 眠りに落ち夢の中で父に会うゆうじ。 「この髭は父さんの髭だ」。 するとゆうじの父は「父さんと話したくなったら心の中に話しかけてごらん」とゆうじを慰める。 しかしゆうじはそれからずっと家に引きこもっていた。 一方TACは超獣が海を汚され怒って出現するものと突き止める。 そしておとりのタンカーを使って超獣をおびき出すことにした。 北斗はゆうじがまた貝殻を採りに海に出ないか心配し、ゆうじに会いに行く。 どうしても会いたくないとゆうじ。 北斗は「男の子はどんなことにもへこたれない勇気があるものだ。そんなことではお父さんのような立派な人にはなれないぞ」と言い残す。 おとりのタンカーに反応した超獣が海から出現。 しかしおとりと気づいた超獣は逆上し、陸の方に向かって進み出した。 北斗の言葉に勇気を出したゆうじは超獣の分析に役立てようと貝殻を拾いに1人海岸へ向かう。 そこへ上陸しようとする超獣が近付いてきた。 波に飲まれ必死で木に掴まるゆうじ。 ゆうじは自分を助けようとする北斗に貝殻を渡し「これで超獣の弱点を調べて」と言う。 自分はいいから北斗だけ逃げるよう言うゆうじ。 「一緒に逃げる」と言う北斗。 しかし超獣が近付いてきたため限界を悟った北斗はゆうじを残しエースに変身した。 エースは上陸した超獣と戦い最後はメタリウム光線で勝利する。 溺れたゆうじを抱え砂浜に上がる北斗。 北斗は必死に人工呼吸するが、ゆうじはなかなか意識を取り戻さない。 ゆうじは夢の中で「来てはいけない。帰りなさい」という父親の声を聞く。 そしてその声は姉のナミコの声に変わっていった。 「ゆうじごめんね。嘘ついて。姉さんがいけなかったのよ」と謝るナミコ。 その声が届いたかゆうじは漸く息を吹き返す。 またゆうじと遊べると喜ぶ子供たち。 ゆうじを抱きかかる北斗に「北斗さんにも髭がある」と喜ぶゆうじであった。 解説(建前) まずカイテイガガンが何者であるかであるが、これもヤプールの破片から生まれた超獣であろう。 海の汚染で生活圏が脅かされた貝にでも乗り移ったか。 超獣の鱗なんてTACの技術力を持ってすれば何なく収集できるはずなのに、何故北斗はゆうじの持つ貝殻にこだわったのか。 これはゆうじの採集した貝殻を無駄にしたくないという北斗の温情だろうか。 少なくともTAC内では一度もそういう話は出ておらず、北斗独自の判断だと思われる。 父親の制服が家にあったがあれは予備のものだろうか。 船長がどういう服を着るかは知らないが、乗船用とは別の地上勤務用のものかもしれない。 北斗はエースに変身してもすぐにゆうじを助けなかった。 これは超獣が間近に迫って余裕がなかったと考えられる。 感想(本音) 色々な意味で甘い作品。 正直こういう話は苦手である。 気になるところは多々あるので1つ1つ取り上げることにする。 まずゆうじは子供の割りに手漕ぎボートでかなり沖まで行っている。 漂流した時は波に流されたとも考えられるが、北斗が追いかけて行った時は北斗はモーターボートでかなりの距離を進んでいた。 タンカーが行き来する近くまでだからかなり沖まで行ったのだろう。 しかし子供の力でそんなことは可能なのだろうか。 この辺りかなり無理を感じる。 子供のために休暇を取る北斗。 これ自体は構わないだろう。 しかし「TACは子供の味方だ」という隊長はどうだろう。 確かに超獣は現れていないが、事件が多発する中少し甘すぎるように思う。 超獣と交戦中にダンを見殺しにしようとした29話とはえらい違いである。 どう考えても山中が正論だ。 個人的にこういう特定の少年に入れ込みすぎる話はあまり好きではない。 そして解説にも指摘した貝殻の件。 結局それを研究することもなく、貝殻を採りに行ったゆうじを危ない目に合わせただけである。 しかもゆうじがあんな無茶な行動を取ったのは明らかに北斗のせいだ。 北斗が貝殻を研究に役立てたいと言い、また引きこもるゆうじを挑発したからこそゆうじはああいう無意味で危ないことをした。 一応超獣退治に役立つことだから超獣の爪を採りに行こうとしたダンよりはマシだが、ああいう無謀な行為を果たして勇気と呼んでよいものか。 しかも北斗はエースに変身してもすぐにゆうじを助けない。 結果危うくゆうじは命を落としそうになった。 これは今までのウルトラシリーズとしては明らかに不自然。 ドラマを盛り上げるために助けなかったとしか解釈出来ないであろう。 やはりウルトラに縁が薄い監督、脚本家だからこうなったのだろうか。 とまあこの作品はその作りの甘さ、ドラマの甘さなどが感じられイマイチ入り込めない。 最後の息を吹き返すシーンはそれなりに感動できるのだが、それまでの話を考えるとその感動も割り引かれるのが私の本音だ。 長坂氏は一流の脚本家なのだが、どうもウルトラに向いてないと言うかあまりわかってないような気がする。 せめて監督が筧さん辺りならもう少し自然になったのかもしれないが。 その他感想を少し。 姉のナミコ役は御存知レオの百子さん役の丘野かおり。 当時は山田圭子という名前で出ていた。 この頃はまだ高校生なのか、レオに比べると幾分子供っぽく見える。 しかし何故この人はあんなに眉毛が薄いのだろう。 今回ダンはゆうじと遊ぶだけのチョイ役。 長坂さんがダンを登場させたのだからもう少し活躍させてもいいのに(ダン登場を決めたわけではなかろうが)。 北斗とゆうじは人工呼吸のため口づけをする。 よく見ると口はついてないようにも見えるが、この少年のファーストキスが北斗とだったら何か嫌だろうな。 あっさり北斗の申し出を許可する隊長。 しかしそれではあまりにも山中の立場はないぞ。 うーん、山中ってやっぱり不憫な存在だなあ。 カイテイガガンは面白いデザインなのだがストーリー的にあまり存在感がなかった。 ところで虹超獣というのは出現する時の光のことか? 今回は新マンの劇伴が多く使われていた。 そのためかカイテイガガンは超獣というより怪獣といった方が相応しい気がする。 前述のとおりイマイチ納得できないストーリーなので個人的評価は低い。 人間ドラマを取り入れるのもいいけど、あまり甘すぎるのはウルトラシリーズにそぐわないのではないか。 もう少し大人向けにした方が個人的趣向には合う。 ただこの時期は子供向けにシフトしてるだけに致し方ないのかもしれない。 とは言え子供向けメッセージとしてあれでいいのか疑問も残る。 この時期のエースは何とも異質な雰囲気を感じる。 おなじみの脚本家以外の脚本家が多く参加してるためか。 ドラマを描くのはいいが何となくバランスを失している気がする。 超獣が完全におまけになってるのも痛いところだ。 以上今回の感想であるが、かなり辛口になってしまいこのエピソードが好きな人には申し訳ない次第である。 あくまで個人的な観点なのでその旨御了承願いたい。 作品の評価は人それぞれなのは1期、2期の話でも実証済みである。 |