データ 脚本は石堂淑朗。 監督は筧正典。 ストーリー 神社で小さい子供をいじめる少年を見たダンはそれを止めようとするが、エースのお面を被った別の少年に先を越されてしまう。 その少年はダンの友達の大助。 ウルトラマンエースの大ファンであるその少年はエースのお面を被りすっかりその気になっていた。 ダンと大助はさっきの少年の母親に叱られ逃げる途中に空から気球が降りてくるのを目撃する。 空き地に行った2人は2人組の男が子供達を気球に乗せようとしてるところに遭遇した。 大助は気球に乗りたいがため女の子を転ばしてでも先頭に。 ダンはその女の子を助け、気球に乗った大助の戻るのを待つことにした。 その頃TAC基地では異様な物が激しいエネルギーを出しているのを観測。 隊長は宇宙生物の権威吉村にデータの分析を頼むが、吉村は超獣だと言う。 調査に向かった北斗と吉村は子供達の乗った気球を目撃。 北斗はただの気球と安心して子供達の姿を微笑ましく見ていたが、吉村は慎重に調査を続けていた。 「小型の超獣が出すくらいのエネルギーだ」と言う吉村に北斗は「子供も小さな超獣だ」と言う。 結局北斗は基地に「異様な物体はただの気球でした」と報告し、基地に帰還した。 その頃気球では子供達が怪しい光を浴び生気のない状態に。 降りて来た大助も明らかに元気がなかった。 その後も生気のない子供達を見て心配になったダンは大助の家を訪ねる。 母親によると大助は家で大人しく勉強してるという。 ダンは「気球が超獣だと」北斗にも話すが、北斗は取り合わない。 一方、子供達を大人しくさせる気球の評判は全国に広まり、母親たちが我先に子供達を乗せようとしていた。 大助の変わりようを訝しがるダンは大助を遊びに連れ出すと言って、病院へ向かう。 途中大助の頬を叩くダンだが大助はやり返そうとしない。 医者に見てもらうと、大助は脳波がないことが判明した。 すぐTACに連絡するダン。 吉村は超獣の仕業と断定するが、北斗は「気球が超獣だなんて、子供達が何も信用できなくなるぞ」と言う。 TACに入った連絡によると、生気を吸い取られた子供達は老人のような状態になるという。 「あの時ダンの言うことをもっと聞いておけば」と北斗。 出動したTACだったが、気球は元の十倍の大きさになっていた。 おまけに子供が乗ってるため手出しが出来ない。 地上に下りて母親達を説得するTACであったが、逆に追い返され気球を攻撃できない。 北斗は気球のロープを切り、網で受け止める作戦を提案。 隊長はすぐ基地の上にネットを張らせることにするが、子供以外気球に乗れないためそこまで気球を誘導する手立てがない。 そこで北斗はダンに頼んで気球を基地に誘導してもらうよう言う。 最初は渋るダンだったが、北斗の説得により意を決した。 ダンは気球に乗り、言われたとおり麻酔銃で超獣に操られている男を眠らせる。 そして生気を吸い取ろうとする気球をV09で牽制しながら、気球をどうにかネットの上まで操縦してきた。 すかさずスペースからレーザーを出し、ロープを焼き切ろうとするTAC。 しかしロープはなかなか焼き切れない。 そうこうしている内に気球に穴が開き超獣バッドバアロンが子供達を閉じ込めたまま現れた。 迂闊に攻撃できないTAC。 スペースも墜落させられる。 脱出した北斗はエースに変身。 しかしエースも子供達を気遣ってなかなか攻撃できない。 ピンチに陥るエース。 しかしエースは一瞬の隙を見逃さなかった。 ギロチンショットでバッドバアロンの首を落とすと、今度は縦にショットを放ち、バアロンの同体を真っ二つにした。 すると中からダン達少年と、少年達の魂が入った風船が。 その風船は魂の持ち主である少年達の下へ帰っていくのであった。 生気を取り戻した大助は神社の境内で元気に相撲を取る。 それを見ていた隊長は一緒にいるダンを「君はまさにウルトラ6番目の弟」と褒め称え、ダンもそれに応えてVサイン。 それを笑顔で見守る北斗であった。 解説(建前) まずバッドバアロンは何者か? 背後にヤプールの存在を感じさせないではないが、やはり気球か風船が生命体となり超獣化したと考えるのが素直だろう。 もちろんそれがヤプールの破片の仕業である可能性は高い。 あの男達は何者か? これも吉村の言うとおり、バアロンに操られていたと考えるのが素直。 子供達同様生気を吸い取られ、手下になっていたのであろう。 彼らもバアロンの死とともに魂を取り戻したものと考えられる。 ダンが大助を診察させられたのは北斗のつてが利いたのか。 ダンがTAC内で徐々に認知されているのがわかる。 感想(本音) 今回もまた何となく重い話。 社会風刺も効いており、子供向けながら大人向けでもある話だ。 とは言え、ややステレオタイプな感も否めない。 まあ「ママゴン」に象徴されるように当時は教育ママが問題となっていたので、このような演出も致し方ないであろうか。 基本は子供向けなので、これくらいわかりやすくてもいいのかもしれない。 今回は大助君がいい味を出していて良かった。 ダン顔負けのウルトラ馬鹿っぷり。 それだけに生気を吸い取られた後の対比が上手くいっていた。 ママゴンはご存知塩沢とき。 て、最近あまり見ないけどどうしてるんでしょうね。 「TACの計器は異様な物という曖昧な報告しか出来ない代物じゃないぞ」と隊長。 今までもかなり曖昧だった気がするがどうなんだろう。 今回はデータ分析は吉村に委ねられていた。 これはおそらく梶降板の影響によるのだろう。 宇宙生物の権威という設定が33話にして初めて生かされた形だ。 今までなら梶がその手の報告をしていた。 どうせなら今野のロケット工学のオーソリティーという設定も生かして欲しかったが。 今回北斗は相手が気球ということでかなり調査がいい加減であった。 一方吉村はデータを信じて徹底的に調査しようとする。 疑問があったら徹底的に調べる北斗らしくない態度であるが、こどもに対して甘いという点では一貫性を有している。 ただダンの言うことを信じないのはどうしたものか。 北斗はダンが「ウルトラ6番目の弟」と浮かれてる普段の姿を見て「何でも超獣に結びつける」と偏見を抱いていたのであろうか。 今までのエピソードからも少し違和感を感じる北斗の態度であった(一応反省はしてたが)。 気球に乗るヒッピーの男達は時代を感じさせて良い。 同様にお寺の境内で相撲を取る子供達も今では見られない光景だ。 私は47年生まれなので同世代ではないが、それでも何ともノスタルジーを感じる。 やっぱり子供は外で遊ばなきゃ。 「ウルトラ兄弟が見てる」と子供だましの説得をしてダンを危険な任務に就かせようとする北斗。 ちょっと酷いのでは。 そしてそれをすんなり応援する姉の香代子。 事の重大さを認識してないと見える。 それとも盲目的に北斗の言うことを信じているのか。 今回のテーマはこどもは元気でなければならないというオーソドックスなもの。 これは現代にも通じる、いや現代ではさらに重要なテーマであろう。 今の子供達は元気に欠ける嫌いがある。 皆バアロンに乗せられたのであろうか。 行き過ぎた勉強の押し付けは子供達の生気を奪ってしまう。 当時の教育ママを批判するとともに、将来の子供像を予見するものとも言えよう。 もちろん現実はそう単純なものではないが。 話の構成としてはダンを中心に無理なく仕上がっている。 たださすがにダンを気球に乗せるのは行き過ぎな気が。 結局失敗に終わりエースの出番になるのだが、個人的にはそこまでダンを活躍させなくてもと思う。 もちろんこれは趣向の問題だが。 あと、今回のギロチンショット二連発は爽快。 まさにエースの醍醐味である。 石堂氏得意の超常現象に子供達を上手く絡めて、社会風刺にTACの作戦と話としては上手く出来ている。 個人的趣味として子供中心のこの頃のエースはあまり好きではないのだが、話の出来自体は悪くないであろう。 ベテラン脚本家にベテラン監督。 堅実な仕事振りはさすがである。 |