データ 脚本は山田正弘。 監督は岡村精。 ストーリー ランニングするダンと北斗は空に浮かぶ黒いほうき星を目撃する。 TAC基地でもその彗星について話題になっており、彗星は質量ゼロでデータ的には何もないことになるという。 その時何者かが基地内に。 「北斗さんにお話があるの」。 基地内に侵入したのは幼い少女であった。 少女は獏と獏おじさんを助けて欲しいと言う。 北斗は隊長の命令で少女を家に送ることに。 しかし少女は獏に会うと動物園に向かわせる。 動物園では獏おじさんが獏に話しかけていた。 しかし獏は答えない。 獏は少し風邪気味のようだ。 そこに少女と北斗が駆けつける。 しかし急に獏が消えた。 一方町には超獣バクタリが出現。 獏おじさんは飼育係に獏をどこかに隠したと疑われる。 獏おじさんは必死に獏に帰ってくるよう呼びかける。 一方バクタリはTACの十文字攻撃により姿を消し、獏もまた元の場所に姿を現した。 北斗は獏おじさんの家へ行き、近頃獏の様子がおかしいと聞かされる。 長年の研究の成果で獏と喋れるようになったという獏おじさんによると、獏は最近「僕が僕じゃなくなる」と言ってるという。 それは3日前のことで黒い彗星が目撃された日と同じ日だった。 TAC基地では超獣について話し合われ、超獣は黒い彗星の異次元エネルギーが動物に取り付いたものではないかという。 北斗は美川とパンサーでパトロールし、獏を見に動物園へ向かう。 動物園では獏おじさん獏山が獏に話しかけていたが獏は言うことを聞かない。 そして獏は再び姿を消し、町に再びバクタリが出現。 飼育係は肩の絆創膏を見つけ、あれはうちの獏だという。 獏山の必死の呼びかけで元の姿に戻った獏であったが、TACの最高会議により銃殺が決定。 獏は銃殺のため野原に連れ出される。 銃を構える銃殺隊。 その時獏山がそれを止めようと必死で駆けつけてきた。 しかし銃殺隊は先に発砲してしまう。 爆発し炎上する獏の檻。 しかし獏は死んでいなかった。 超獣バクタリとなって大暴れする。 銃撃のショックで獏はもはや獏山の言うことすら聞かなくなっていた。 獏山と少女は暴れるバクタリのためピンチに。 そこで北斗はエースに変身する。 優勢に戦うエース。 とどめのメタリウム光線を発射しようとした瞬間、何者かの妨害が入った。 「バクタリを殺してはいけない」。 それはウルトラセブンからのメッセージであった。 獏はセブンにより元の姿に戻され、エースはそれを元の動物園に帰してやる。 獏は病気も治り元の元気な姿に。 少女に感謝され、晴れ晴れとした表情の北斗であった。 解説(建前) まず黒い彗星について。 異次元エネルギーを持っていることからヤプールに何か関係があるのか。 考えられるのはヤプール残党の差し金若しくはヤプールの破片に宿った異次元エネルギー。 獏に取り付いたのが偶々だとしたらやはり後者か。 まあいずれでも問題はないであろう。 セブンの額から出たビームにより獏は元に戻った。 これはセブンのビームに異次元エネルギーを中和させる成分が含まれていたと考えられる。 いやはや、セブンの能力はなかなか凄い。 獏山は長年の研究の成果で獏と話せるようになったという。 しかし獏に言葉があるとは思えないので獏の仕草や態度から獏の気持ちを読み取る術を会得したのではないか。 あるいは一種の超能力かもしれない。 獏山の能力もなかなか凄い。 獏と一緒に絆創膏も大きくなったのは絆創膏にも異次元エネルギーが宿ったためではないか。 異次元エネルギーのパワーはなかなか凄い。 感想(本音) エースらしい超常現象にシュールな演出が加わってなかなか異色な作品。 岡村氏の演出は実相寺氏を髣髴とさせ、気合が入ってるのがわかる。 ただ少しやりすぎな感も否めない(そこが実相寺チックなのだが)。 しかしストーリー的にもまとまっており、個人的には割りに好きな作品だ。 まず少女が基地に入ってくるシーン。 ドアが開いたのに「誰か気づけよ!」はさておき、少女の目線でカメラが動き少女登場シーンに上手くつなげている。 ただ竜隊長のドアップはやり過ぎかも。 役者さんもさぞかしやりにくかっただろうな。 面白かったけど。 今回最も実相寺ぽい演出は獏を銃殺場に運ぶシーンだろう。 まず獏についての会議のシーン。 いきなり銃殺に決定。 基地内も真っ暗。 そして獏を運ぶ通路。 何故か全身タイツのモジモジくんみたいな連中が檻を担いでいる。 それを上から撮り下ろすアングル。 続いて赤い風船が浮かんでるかと思えば少女の姿が。 しかしあの通路は何なんだろう。 一般人が簡単に入れる銃殺場って? そして銃殺場には何故かアナウンサーが。 「超獣になる前に銃殺するという画期的なやり方は超獣対策に革命をもたらす」云々。 もうやりすぎ。 しかし赤い風船は効果的に使われており、風船越しに獏おじさんが駆けつけて来るシーン。 風船が割れると同時に銃が発射されるシーン。 風船が何を象徴するかはよくわからないが、印象深いシーンになっている。 強引に解釈すれば獏の生命の風前の灯火が赤い風船の揺らめきであろうか。 続くバクタリの出現とともに静から動へ展開する構成は見事だと思う。 今回は前回と違い少女が最後まで話の中心におり、演出も冴えているので作品として成功している。 大胆なカメラアングルとシュールな演出は実相寺的な異色な雰囲気を醸し出している。 演出についてはそれくらいにして細かいツッコミを少し。 簡単に少女に潜入されるTAC基地。 論外である。 獏一筋30年の獏おじさん。 獏キ○○○と言われても仕方あるまい。 最高司令官という抽象的な肩書きの人の鶴の一声で決まる獏銃殺。 て、そんな大袈裟な肩書きの人が出てくるほどではないと思うのだが。 普通に考えても超獣になる獏なんて銃殺だろう。 とは言え、ノコギリンやクプクプを見るまでもなくこの手の作戦は悉く失敗に終わるが。 少女のスカートをめくる獏ちゃん(獏おじさんじゃないよ)。 少女のビックリする表情がいい。 と言うかこの監督少し危ないのでは。 少女に対する演出へのこだわりが凄い。 ロリコンさんには必見のシーンであろう(私は違いますよ)。 バクタリを攻撃する隊長らに対し北斗の一言。 「攻撃を中止してください」。 「よしわかった」と隊長。 理由も聞かずに物分かりよすぎ。 銃殺に失敗しバクタリに溶かされる銃殺係哀れ。 しかしあのアナウンサーは無事逃げられたのであろうか。 エースはただの動物相手に馬乗りになったり、飛び蹴りを食らわしたり容赦ない激ファイト。 普段もそれくらいやってくれ。 少女役は御存知戸川京子。 亡くなったのが信じられないが、なかなか可愛らしく、ちょっと棒読み気味ではあったが印象に残る好演であった。 色々あったのだろうが、若いのに勿体無いことである。 しかしそういう彼女だからこそ、どこか現実離れした少女を好演できたのかもしれない。 今回はダンの登場が最初と最後の少ししかなかった。 これはこの脚本が北斗、南時代を前提に書かれていたからであろう。 そう言えば北斗と美川のパンサーでの絡みは明らかに違和感があった。 「何を考えてるの」と美川隊員が妙に優しい声で言うのは、あのセリフが元々夕子のセリフであることによるのだろう。 最後も野原で合体変身。 そういう脚本になっていたものと思われる。 今回ゲスト出演の梶隊員はこれ以降は出演せず。 スケジュールの都合だろうが、存在感ある役だっただけに残念である。 ダンの最後のセリフ。 「俺の言ったとおりだろ。俺はウルトラ6番目の弟だ」。 若いのにかわいそうである。 最後に獏に異次元エネルギーが取り付いて超獣となる展開について。 これまでにも牛神が人間に乗り移って超獣化したり、天女に宇宙線が加わって超獣化したりしたことはあるが、今回のように動物に異次元エネルギーが加わって超獣化するのは初めて。 以後のシリーズでも動物や物に怨念やエネルギーが加わり超獣化(怪獣化)するパターンは頻繁に見られるが、このようにエネルギーを分離して元に戻すという展開はあまりないように思う。 この辺り子供向けのソフトな路線に感じられるが、この路線を徹底的に推し進めたのがあのウルトラマンコスモスである。 怪獣や超獣をただ倒すのではなく、性善的に捉えその原因を取り去る。 ある意味ウルトラマンコスモスのモデルとなっているのが本エピソードではないか。 今回の話。 夕子降板前に書かれたらしく、ダンの登場が少ない。 そのため話の軸がきちんと少女と獏おじさんに合っており、前回のような不自然な話にはならなかった。 正直ダンの設定はあまり練られておらず、急に加わったことからスタッフもその扱いに困っているように感じられる。 その辺りこの時期のエースが今ひとつ盛り上がりに欠ける要因であろう。 ダンについては次第に違和感はなくなっていくが、その役回りはどんどん普通の少年になっていくような気がする。 それはさておき、今回は脚本や演出がぴたっとハマっており内容はともかく、作品として綺麗にまとまっており個人的には評価している1作である。 |