データ 脚本は石堂淑朗。 監督は山際永三。 ストーリー 明るく冷たい満月の夜。 パトロールするTAC隊員達。 北斗、南はパンサーで地上をパトロールしていた。 「車を止めて」と夕子。 車を降りた夕子は月に向かって走り出した。 「わかりました。今夜ルナチクスが姿を現すんですね。やります。必ず」月に向かって話しかける夕子。 その頃神山に超獣ルナチクスが出現。 「もっと速く走れないの」。 「夕子、さっきのおかしな振る舞いと超獣の出現は関係あるのか」。 攻撃するTAC。 「やっぱりあいつだった」と夕子。 超獣は目をミサイルにしてTACスペースを撃墜。 ルナチクスは地下のマグマの中へ。 走り出す夕子、追う北斗。 「どうしたというんだ」と北斗。 「変身するのよ。あの超獣は年に1度地球の表面に近づいてくるのよ、10月の満月の夜に。ほっとけば地球のマグマは吸収され月のようになるわ。この地球を月のようにしてはいけないわ」。 エースに変身する2人。 エースは体を回転させ、地下のルナチクスの下へ。 マグマの中で格闘するエース。 火山が爆発しルナチクスは地上へ。 追うエース。 炎を吐いて攻撃するルナチクス。 しかし最後はマグマの炎の中へ投げ込まれルナチクスは最期を遂げた。 悲しげに月を眺める夕子。 「みんなの所へ行こう」と北斗。 すると夕子は泣き出した。 「何故泣く」と北斗。 「お別れの時が来たから」と夕子。 「どうして我々が別れることが出来るんだ」と北斗。 「私本当は宇宙人なの。地球に1番近い星である月に住む宇宙人」。 「君が月星人」。 「地球から分かれたときは月も地球と同じように美しい星になるはずだった。 それをルナチクスによってマグマを吸収され月星人のほとんどが死に絶えたわ」。 「しかし君は生きている」。 「ええ、太陽から送られるエネルギーを頼りに今も一握りの月星人が冥王星に逃れて生きています。 私もその1人なの」。 「私はルナチクスを滅ぼすために派遣された。それは私達月の兄である地球を救うことにもなったわ」。 「知らなかった。君が地球人でないとは」。 「ごめんなさいね今まで黙っていて」。 「君が月の人なら俺達地球人の妹じゃないか」。 「あなたの協力でエースになってやっと目的を果たしたわ」。 「私には聞こえるわ。仲間達が喜びの合唱をしているのが」。 「俺にも聞こえる」。 「さよなら、もう二度と会うこともないわ」。 「北斗隊員。 これからはあなた1人でウルトラマンエースになるのよ」。 「俺一人でなれるだろうか」。 「なれるわ」。 「あと僅かしか地球にいられないわ。隊長たちとお別れしてきます」。 「星司さんさようなら」。 「夕子」。 「俺は1人で見送る。 長い間一緒に戦ってくれた妹をここから見送る」。 「ありがとう」。 走り出す夕子。 夕子の服は白いドレスに変わっていた。 野原を舞う夕子。 「隊長、超獣ルナチクスを滅ぼして私の使命は終わりました。 今夜限り私は月に帰らせていただきます」。 「今我々は君の不思議な力を見た。 君の言うことをそのまま信じることが出来る」。 「ありがとう隊長。色々とお世話になりました」。 各隊員に別れを告げる夕子。 「いつの日か月も地球のように美しい星に戻る日が来るでしょう。 その日のために私は月で努力します」。 1人で変身する北斗。 嬉しそうにエースの周りを飛ぶ夕子。 エースに見送られながら、夕子は宇宙に帰って行った。 夕子の制服を燃やしながらTACのテーマを歌う隊員達。 「TAC隊員北斗星司はこれからは1人でウルトラマンエースになる。 いやならなければいけないのだ」。 解説(建前) 今回の最大の問題点は北斗と夕子があっさり分離できたのは何故ということだろう。 まず前提として夕子の生死であるが、第1話の事故で明確に死んだとの表現がなされていないことから瀕死の重傷でとどまっていたと考えるのが妥当である。 とすると、エースの変身にとって夕子の存在とは何だったのか。 これを考察するにはそもそもウルトラマンとは何者かまで遡らねばならないだろう。 さすがにその答えを探すのは難しく色々仮説が考えられると思うが、ミクロから巨大化まで自由自在という点や人に乗り移れる点から根本的には光エネルギーが本体、少なくとも巨大化したときは光エネルギーがかなりの割合を占めるものと考えられる。 そう考えると、夕子は光エネルギーに転換されエースの1部に取り込まれたと考えることが出来よう。 ティガの最終回もそんな感じだったように思う(あまり覚えてないが)。 もちろん指輪をつけてれば誰でもいいというわけではない。 それは北斗と夕子の信頼、いや愛といったものがなせる業であろう。 その究極がモニタータッチだったのは以前に触れた。 つまりエースの本体は基本的には北斗。 従ってエース自身が変身システムを変えようと思えば、1人変身は基本形なのでそれほど難しいことではない。 ただ、夕子のエネルギー、しかも普通の人間とは違う月星人のエネルギーを失ったのはエースの戦闘力に少なからぬ影響を与えたものと考えられる。 以後エースが単なるノラ超獣に苦戦するのはその辺りに影響があるのかもしれない。 因みに以前エースは2人のエネルギーを半々にして利用してると書いたが、ここではエネルギーの総和の話なので戦闘力が落ちたと解しても矛盾はない。 後ここでは詳しく触れないが、ウルトラマンは人間と合体することにより特に地球での能力をアップさせてると私見では解釈している。 しかしそれは時にはマイナスになることも新マンの対ナックル戦で実証済みである。 夕子は何処へ帰ったのか。 月ではなく宇宙とナレーションされていたので、冥王星へひとまず帰ったのだろう。 あの白いドレスは何なのか。 隊員服の下に常にミクロ化されて装着されていたのではないか。 月星人としての能力を覚醒させるとともにそれが実体化したということだろう。 最後に燃やしていた夕子の制服は北斗がみんなと合流する際に拾ったということで。 あのドレスは宇宙服の代わりをしていて、宇宙空間でも大丈夫なように出来てるらしい。 空を飛べるのも夕子の能力もあるが、それにより反応する素材で作られてるのかもしれない。 ルナチクスは何者か。 地球と月が分かれてどうたら言ってたので相当昔からいると思われる。 もしかしたら大昔にヤプールはまず月を滅ぼしたのかもしれない。 その後、どっか他の星に行き最近地球に帰って来たのだろう。 夕子はいつから地球にいるのか。 北斗に子供の頃の話をしていたので子供の頃から地球にいると考えるのが素直であるが、それでは地球に夕子以外の月星人がいることになってしまいそうである。 冥王星から派遣された云々からは夕子は子供の頃月星人に連れられ地球の両親の下に養子に出されたのではないか。 ルナチクスがそんな大昔から地球にいたとは考えられないので、それまで月で休んでいたルナチクスが地球に移るのを見て冥王星から送り込まれたのかもしれない。 とすると、夕子自身自分が月星人であると知ったのはある程度大きくなってからではないか。 もしかすると、看護婦をやっていた頃は自分の正体を知らなかった可能性すらあるだろう。 この問題は難しいのでこれくらいにしておく。 今回エースは異常に長い時間ルナチクスと戦っている。 しかしこれは地下のマグマでの戦いがほとんどだったことから地熱エネルギーによりエネルギーを補充してたからと考えられる。 最後にエースが地下に潜れた点。 アリブンタ戦からは3年ほど経っておりゾフィが自分で潜れたことからそれを見てマスターした、もしくは教わった。 取り立てて驚くことではあるまい。 感想(本音) 夕子がかぐや姫になって月へ帰るという何ともファンタジーな、何とも子供だましな話である。 いや、むしろ子供の方が醒めてるのではないか。 大人になって今見るとなかなか感動的ないいエピソードだと思う。 夕子降板の是非はともかく、この話に素直に感動できる感性は失わないでいたい。 それが熱演する北斗と夕子へのせめてものはなむけではないか。 脚本は石堂氏。 アプラサールの回で天女を登場させていた同氏の脚本ということで、それをかなりヒントにしている感じはする。 誰の発案か知らないが、ヒーローの片割れが月に帰るなんてよく思いついたものだ。 普通は殉職するのだが、坂田兄弟の反省があったのだろう。 個人的にはベストではないが、殉職よりはよかったかなと思っている。 おかげで最終回にも出れたし、て、あれじゃあの世から話しかけてるのと変わらないか。 今回の最大の見せ場は夕子が自分の正体を打ち明けて北斗と語り合うシーン、そしてその後野原を舞う幻想的なシーンだろう。 ドビュッシーのピアノ曲とともにとても切ない別れの雰囲気が出ていた名シーンだと思う。 セブン最終回でもクラシックは使われていたが、その時はもう少し激情的だったのに対し今回はもう少し幻想的で、いずれもエピソードを盛り上げるいい選曲だと思う。 夕子はある意味これで伝説になった。 しかし誰が考えたんだこの設定。 最後夕子の制服を燃やすシーン。 そこまでして夕子の存在をなかったことにするかと思うと、涙が出そうになった。 しかし夕子が隊員たちにお別れを言うシーンの曲はかなり感動的。 今回は全体的に音楽の使い方が良かったと思う。 正直かなり無茶な話なのに、爽やかなエピソードに仕立てたスタッフに感謝。 星光子さんも満足でしょう。 今回スペースがミサイルを発射するシーンで1度だけ空が青くなってました。 編集ミスか。 「知らなかった。君が地球人でないとは」と北斗。 セリフのおかしさとともに妙に北斗が白々しくて思わず笑ってしまいました。 マグマを食べるくせに炎の中に投げられ燃え尽きるルナチクス。 よくそんなのでマグマの中に生きられたな。 あっさり夕子の言うことを信用する隊長。 いつでも冷静沈着。 最後に触れねばならないのは北斗にとって夕子は何だったのかという点。 「我々がどうして別れることが出来るのか」。 この言葉に表されてるように2人はまさに一心同体なのでしょう。 それは恋人や夫婦よりもっと近い繋がりあい。 血を分けた兄弟という感覚だったのかもしれません。 もちろん北斗は2人が本当の兄弟でないことは知っています。 「デートにも誘ってくれない」と言われて「忙しいから」と答えていたところからも夕子を異性としてちゃんと意識していたのでしょう。 しかし戦いの中でそういう感情はマイナスになるおそれがある。 時にそれは命取りになるかもしれない。 北斗はそう考えて意識的に夕子を異性として見るのを自制していたのかもしれません。 夕子の方は押さえ切れないところがあったように感じられますが。 市川氏も語ってるように、2人は最終的には人間の男女としてお互いの愛に気付き結ばれるはずでした。 それがヒーロー物ではどうかという問題もありますが、制作者、演者、視聴者の共通の願いでもあったでしょう。 しかし2人には愛を育み成就させる時間が与えられなかった。 こういう形の降板はやはり時代の定めなのでしょうか。 「妹」。 別れを悟った北斗の現時点での最大の愛情表現だったのかもしれません。 エースは次回からは1人変身編。 新たなレギュラーも加わりなんですが、正直てこ入れは失敗に終わったと思います。 以後テンションが低めに。 しかしその最大の要因は市川氏(2話ほど書いてますが)、上原氏の降板ではないかと思います。 そんな感じでエース中盤はやや迷走の感があってあまり好きではないですが、まあ頑張って更新するので今後もよろしくお願いします。 |