ピラミットは超獣の巣だ!


データ

脚本は斉藤正夫。
監督は筧正典。

ストーリー

空に浮かぶ不気味なピラミット。
ある日小学校の校庭で子供達が次々倒れる事件が起きた。
北斗、南は子供達が赤い煙を見たという花壇の付近を掘ってみるが何も出てこない。
訝しがる2人だったが、突如地面から赤い煙が噴出。
地震とともに地面からピラミットが隆起する。
子供達を避難させる北斗と南。
すると煙の中から1人の女が現れた。
北斗は必死に女を救出しようとするが、女は北斗から逃げようとする。
それを見ていた南は女が煙に巻かれても平気だったことに疑念を抱いていた。
煙を吸った子供達は病院に収容されていたが、煙のせいで白血球が増加しており輸血が必要だった。
北斗、南は自らの血を使うよう申し出る。
その時さっきの女が血液検査を拒んで看護婦と言い争っていた。
ミチルという名のその女は北斗の血を輸血されたら死んでしまうと言う。
北斗は病気一つしたことのない健康な体だと反論する南。
結局女は検査を拒んで出て行ってしまった。
基地では新兵器V9の完成が迫っており、隊員たちはそれを心待ちにしていた。
一方ピラミットの調査の結果ピラミットは地球にない金属で作られてることが判明。
引き続き調査することになった。
街を歩くミチルは息苦しくなりバッグから赤いガスの入った袋を取り出すと、中の煙を吸い始める。
それを見たヒッピーは煙を吸わせてくれるよう頼み、TACの基地の場所を教える代わりに袋をもらった。
ミチルはその情報を元にTACの新兵器V9を破壊すべく富士山麓へ向かう。
一方煙を吸ったヒッピーは倒れこんでしまった。
パトロール中の北斗、南は富士へ向かうバスとすれ違うが中の様子がおかしいことに気付きUターンする。
バスの中はミチルが補給したガスが漏れ出して、運転手や他の乗客が皆気を失っていた。
必死にバスへ飛び移り、ミチルを救出する北斗。
ミチルは北斗の胸の中で気を失う。
基地に帰った南は北斗にミチルは絶対怪しいと言うが、北斗は色眼鏡で人を見るなと反論。
意見が食い違う。
納得できない夕子はミチルの収容されてるメディカルセンターを訪ねる。
しかしミチルはいつの間にか病院から抜け出していた。
部屋にあった地図から夕子はミチルがV9を破壊しにいったことを直感。
秘密基地へ向かう。
秘密基地ではミチルが赤いガスで警備員を倒し、時限爆弾を既に仕掛けていた。
現場に駆けつけた南はミチルの投げた赤いガスのカプセルに気を失う。
しかしすぐ正気を取り戻し、時限爆弾を解除。
バイクで逃走するミチルをパンサーで追いかけ、遂にピラミットの前で追い詰めた。
自分はオリオン星人だと白状するミチル。
その時ピラミットから赤い光線が放たれた。
南はその光線によりピラミットの中に閉じ込められてしまう。
ピラミットの中で夕子はオリオン星人の野望について聞かされた。
彼らは1億3000年前地球を植民地としていた宇宙人で、大洪水のため今まで冷凍睡眠に入っていたという。
そしてまた今、本国からの指令で地球を奪還しようとしているのだった。
ピラミットの外のミチルはオリオン星人の上司に自分をピラミットの中へ入れてくれるよう懇願する。
しかしV9の爆破に失敗し、地球人に好意を抱き始めたミチルをオリオン星人は許さなかった。
ミチルの使命は終わったとピラミットを隆起させミチルを吹き飛ばす。
飛ばされたミチルを助ける北斗。
北斗はミチルに本当のことを聞こうとするが、答えようとしない。
思わず北斗はミチルの頬を叩く。
その時地上に姿を現したピラミットから超獣スフィンクスが出現。
TACはファルコンで応戦するが全く歯が立たない。
アローの今野を残して隊長たちは地上で攻撃。
しかしアローは撃墜。
北斗もスフィンクスの炎で負傷する。
北斗を助けに行くミチル。
北斗を介抱しながらとうとう自らオリオン星人であることを名乗った。
その時V9が完成。
隊長は梶にV9の発射準備を急がせたが、ピラミットから磔になった南が現れる。
それを見た北斗は単独行動を起こし、勝手にアローに乗ってピラミットへ向かった。
ピラミットの怪光線でアローは撃墜。
その時2人のリングが光った。
脱出してピラミットへ突入する北斗。
2人はエースに変身し、スフィンクスに戦いを挑む。
スフィンクスの光線に倒れるエースだが、スフィンクスはミチルの吹く笛の音で大人しくなった。
激怒したオリオン星人はピラミットから光線を発射してミチルを抹殺する。
復活したエースはエースブレードでスフィンクスの頭部を切断。
胴体だけでなお襲い掛かるスフィンクスをタイマーショットで破壊した。
一方オリオン星人は切断されたスフィンクスの頭部を収納してピラミットごと逃げようとする。
しかしエースに捕まりピラミットごと爆破され最期を遂げた。
エースはミチルの亡骸を手に取りミチルをオリオン星に運んでいった。
夜、オリオン星の隣には新たな星が。
それは星になったミチルの姿だったのであろうか。
夜空を見上げるTAC隊員たちであった。

解説(建前)

オリオン星人とミチルの見た目は同じ種族とは思えないほど違う。
単に変身していただけなのか。
しかしあの扱いの差、ただの男尊女卑だけでは片付けられない。
もしかしてミチルはオリオン星人と人間のハーフだったのかも。
しかし2人しか地球にいなかったというのもよくわからない。
本国(オリオン星)にとって地球などどうでもよかったのではないか。
それとエースがミチルをオリオン星に帰したってのも違和感を感じる。
これらから考えるに、オリオン星人で地球を狙ってたのはほんの一部だけで、本来は友好的な人たちなのではないか。

オリオン星人はTACの存在や新兵器の開発まで知っていた。
どこから情報を得たのか。
実は他に本国から送られてきた工作員が地球にいて情報を収集していたのかもしれない。
それにしても南夕子のフルネームまで知ってるとは。
しかし流石に夕子がウルトラマンエースということまではわからなかったようだ。
因みにバレバレタッチは脱出の瞬間2人は異次元空間へ行き変身したという毎度強引な理由付けで済ませたいと思う。

感想(本音)

比較的好きな話。
ストーリーは粗があるが、夕子を上手く活用しており今までとは違った2人の関係を描くことに成功している。
ただ、変身に限界を感じさせ、その面倒さが夕子降板の一因になったことは否めないだろう。

タイトルはピラミットになってるけど、これはただの誤植か意図的なものか。
地球のピラミッドと差別化を図ったとも考えられるけど、脚本家の勘違いかもしれないし、よくわからん。
オリオン星人は地球を取り返してどうするつもりだったのだろう。
オリオンガスがないと生きて行けないというのはどう考えても不便なのだが。
地球全体にガスを蔓延させると地球人が死んでしまうし、彼らの狙いがよくわからん。
やっぱオリオン星人の一部の人が暴走してるだけにしか見えない。
1億3000年前に地球を支配していたというのも本人が言ってるだけであるいは嘘なのかもしれない。
しかしいくら冷凍睡眠でも1億3000年てのは凄すぎ。
ミチルも1億3000年前から生きていたのだろうか。
しかし他の仲間はいないのか。
本国ももう少し仲間を派遣してやればいいのに。
しかしあまりにもスケールが大きすぎて話が見えにくい。

小学校の校庭を調査する北斗、南。
しかし小学生を周りに置いとくのは配慮なさすぎだぞ。
案の定ガスが噴出して子供倒れてるし。
ミチルは明らかに不自然な登場の仕方してるのに、北斗は何故あんなにミチルの肩を持つのだろう。
夕子の方が明らかに筋が通っているが。
これは理性的な夕子、感情的な北斗という対比を出したかったのだろうけど、北斗の言い分が無理があるので北斗が単なる女好きにしか見えない。
とは言ってもミチルのルックスがあまりにもアレなので、あまり説得力がない。
メトロン星人マヤくらいの見た目だったらもっと盛り上がっただろうに。
遠まわしに夕子の嫉妬を描いていたのは意図的なものだろう。

病院のシーンはカメラが色々動いて、野戦病院的な臨場感が出ていて良かった。
その後の基地のシーンの真上からの構図といい、筧監督には珍しくカメラワークに凝っていて真船監督ぽい構図になっていた。
また夕子が北斗と言い争ってる場面でのオーバーな演出もあるいは真船流。
話の繋がりを意識したのか、張り合っただけなのか。
脚本的にも夕子を生かそうという意識があったのかもしれない。

ピラミット上に磔になる夕子は何処となく背徳的。
子供にはわかるまいが。
立ち直ってからのエースが馬鹿に強かったのもお約束。
しかし最初からタイマーショット使えよな。
夕子は一旦ガスで気を失うがすぐ立ち直った。
これは月星人の能力かウルトラの御加護か。
オリオン星人がミチルを抹殺する時、「この裏切り者!」。
て、おいおいお前が「使命は終わった」とか言って先に裏切ったんじゃねえか。
ちょっとそれは極悪すぎだぞ。
ミチルのバイクのシーンはもろ男性のスタント。
吹っ飛ばされるシーンはもろ人形。

今回は夕子最期の活躍篇とも言えるが、脚本的にはやや御都合主義的で粗が多い。
しかし2人の対比で夕子の存在意義が上手く描かれていたので、その点では斉藤さんはいい仕事したと言えるだろう。
2人の対立や焼きもちを絡めればもっと話を書けたと思うが、それでは恋愛ものになりかねないので難しい所なのだろう。
この設定は突き詰めればそっち方面に話が行ってしまうので、ヒーロー物の設定としてはやはり厳しかったのだと思う。
今の時代なら何とかなったかもしれないが。
ヤプールを倒して気分的に陰から陽へと転換したように感じられる話。
新しい展開を期待させるに十分だ。
そして期待に違わずエースは次の2話で最高の盛り上がりを見せる。
しかしそこを頂点に一気にトーンダウン。
1年の長丁場を乗り切る難しさを痛感させられた。
その点、帰ってきたウルトラマンは路線変更が成功した稀有な例だと思う。


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