逆転!ゾフィー只今参上


データ

脚本は真船禎。
監督は真船禎。

ストーリー

ヤプールは恐ろしい奴だ、残忍な奴だ。
地球を征服するためだったら手段を選ばない。
何だってやるのだ。
ある老人の周りを取り巻く子供達。
老人は辻説法する。
「汝らに警告する。末世はそこまで来てるのだ」。
そして歌う。
「お前は神を信じなさい」。
日本全国で子供達が老人に連れられ不気味な歌を歌う事件が発生した。
そしてその老人はみな同じ風貌をしてるという。
老人は1人なのか、複数なのか。
「誰にもわかるわけはない。わかるはずないんだよ。地球の馬鹿どもめ」。
パトロール中の北斗はXYZ地点の砂浜で老人と子供達を目撃する。
「海はまっ黄色だ。山はまっ茶色だ。花は死んでいる」。
基地へ異常なしと報告する北斗。
その時老人と子供達が砂浜から消えた。
急いで浜辺へ下りる北斗。
浜辺に下りると空から雪が。
基地への連絡も通じない。
すると急にさっきの老人が現れる。
しかし顔は猿の化け物で口から火を吐いて北斗に襲い掛かってきた。
「夕子ー!」。
北斗は崖に追い詰められ崖下に転落して大怪我を負う。
基地に帰って報告する北斗だが誰も北斗の話を信じない。
夕子だけは北斗の声が聞こえた気がすると言って北斗を信じる。
しかしXYZ地点で雪が降ったというデータもなく、しかも浜辺自体が地図上に存在していなかった。
それでも必死に自分の見たことを伝えようと北斗は狂ったように老人の歌を歌い始める。
それを見ていたたまれなくなった夕子は「やめて」と北斗を制止する。
「誰も俺のことを信じていない」と北斗。
その時竜隊長が階段を下りてきた。
竜隊長は北斗に休むよう指示。
しかし一方で山中らにXYZ地点の調査を命じる。
隊員たちは全員出動。
「信じますか」と梶。
首を振る隊長。
しかし「私には信じられる気がする」と梶。
その頃北斗は夕子に送られメディカルセンターへ向かっていた。
夕子は子供の頃人魂を見た話をして北斗の言うことも信じられると言う。
XYZ地点へ近づくと、「真っ直ぐ行ってくれ」と北斗。
それを無視して右に曲がる夕子を怒る北斗だが、夕子は「XYZ地点へはこっちの方が近道よ」と言う。
XYZ地点では先に来た山中が北斗らを待ち構えていた。
悠々と浜辺に向かう北斗だが崖下には海が広がっていた。
「疲れているだけだ」と山中。
しかしその後事件は世界中に広がっていく。
老人に連れられた子供達が次々と姿を消していったのだ。
基地にかかってきた無線からは例の歌が。
ある晩北斗は河原で大勢の子供達を目撃する。
子供達を追う北斗だが夢の中にいるようで手応えがない。
子供達は川の中に消えていった。
悔しがる北斗に隊長が話しかける。
「消えた子供達の分だけ星が増えた」と隊長。
隊長の甥も夜中に「海は黄色だ。花は死んでいる」と叫んで姿を消していた。
2人はヤプールの仕業であることを確信する。
人類の未来のために戦いを決意する2人だが、異次元へ突入する方法がわからない。
梶は1つだけ方法があると提案する。
それはメビウスの輪を人間に応用するというものであったが、人間の体には過酷で場合によっては命に関わるというものであった。
自ら志願した北斗は装置に入り何日も過酷な環境に耐える。
数日後遂に実験は成功。
北斗は異次元空間へと突入した。
その時ウルトラの星から指令が伝わり北斗、南の指輪が光る。
「テャー!」
ゾフィにより異次元空間へ突入した夕子。
異次元でお互いを呼び合う2人は遂にウルトラタッチに成功した。
変身したエースは巨大ヤプールと対峙。
「ヤプールというのはお前か」
「俺がヤプールだ」
「今日は徹底的にやるぞ」。
ヤプールと戦うエース。
エースはヤプールの超能力に苦戦する。
しかし徐々にヤプールの勢いが弱まってきた。
形勢逆転。
ヤプールの光線もエースには全く通用しない。
遂にエースの放ったメタリウム光線がヤプールにとどめを刺す。
「地球の奴らめ覚えていろ!」
「ヤプール死すとも超獣死なず」
「必ずや怨念となって復讐せん」。
ヤプールは爆発して子供達は異次元空間から解放された。
しかしこれで戦いが終わったわけではない。
恐るべきヤプールのかけらは地球上にばら撒かれたのだ。
危機はまさにそこに迫っている。

解説(建前)

老人は次話にも登場するのでマザロン人と考えられる。
1人で瞬間移動術を使い、世界中の子供をさらっていったのであろう。

北斗は崖から明らかに常人なら命に関わるような落ち方をしている(地面に当たってバウンドしている)。
しかし大した怪我ではなかった。
これはエースとしての能力か、崖も幻影で実際は低い所から落ちたに過ぎないのか。
浜辺自体も幻影なら後者の方が妥当だろうか。

ヤプールの作戦は子供をさらって将来に亘って人類を滅ぼそうというものである。
気が遠い作戦だが、異次元人にとっての100年程度は大した年月ではないのであろう。
じわじわと人類が苦しむさまを見ていたいというヤプールのサディスティックな一面がよく窺える。

夕子の人魂の話は夕子が地球生まれだということを推測させる。
完全に地球人に同化しているところを見ても、夕子は月星人の自覚はあまり持ってなかったのではないか。
そして後に使う特殊能力にもまだ目覚めてなかったのではないか。
あれは月の光がなければ発揮出来ない類の能力かもしれないが。

消えた子供の数だけ星が増え、ヤプールが死ぬと空から子供達が降ってきたことから、異次元空間は空と繋がっているのではないか。
あるいは出口が空にあるとも考えられる。
そう言えばヤプールは空を制した宇宙の悪魔であった。
超獣も空を割って現れるし、やはり空と異次元空間は何らかの関係があるものと思われる。
TACもそれは気付いていて北斗が何とか脱出口を見つけてくれることを期待して異次元に送ったのかもしれない。

異次元に送った方法については詳しい原理はわからない。
そもそも異次元空間が我々の科学を超越してる以上、その突入方法も我々の科学を超越してて当然である。

感想(本音)

難解複雑な話。
とにかくセリフが多い。
子供の頃見たはずだが、老人の歌ばかりインパクトが強くて筋は全然覚えてなかった。
今見ても混乱するくらいだから仕方ないであろう。

今回脚本は真船監督自身。
これはかなり異色である。
メインの市川氏はこんな話(ヤプールが滅ぶ話)書きたがらないから、仕方なかったのか。
やはり本職ではないだけに話の運びが少々荒っぽい。
完全に真船さんの趣味に走ってる節も感じられるほど。

まず前半はエースの基本パターン。
超常現象に、信じてもらえない北斗、信じる夕子。
しかし結局その誤解が解ける場面はない。
いきなり後半には事件が明るみに出てそれまでの葛藤がなかったかのようになっている。
この辺の筋運び、シュールと言うか何と言うか。
基地への無線から例の歌が聞こえてくるし、意味不明なストーリー展開にちょっとついていけない。
また北斗が何処かの川原で子供達を見かけ、竜隊長が現れるシーンは夢か現実か最初区別が付かなかった。
そういう狙いだろうが、この辺りかなり突っ走ってる感がある。

異次元移動装置の無茶さは置いといて、基地内で夕子の「ヤーッ」はないだろ。
ゾフィが行けるのだったら変身した後のエースでも行けると思われ、他に何か方法はなかったのか。
人類が努力してこそ助けがあるというメッセージだろうけど。

脚本の強引さに比べて映像の緻密さは流石真船監督。
まず北斗が基地内で発狂し、隊長が現れるシーン。
隊長が階段を下りてくる様子が画面のブレでよく表されていた。
またこのシーン、異常に尺が長い。
隊員たちが全員出動した後、上からの俯瞰になり隊長のアップ。
そして最後は肩越しの梶
秀逸である。

演出面で見逃せないのが夕子の運転シーン。
「右に曲がりま〜す」
は夕子ファンならずとも嬉しいシーンである。
このシーンは2人のアップを交互に映す形式。
話の内容や雰囲気からも2人が恋人同士であることを感じさせる。

この頃の夕子は各監督とも一生懸命演出していた。
これは視聴率が悪いことから夕子を出来るだけ魅力的なキャラにしようという意図からではないか。
また各監督とも話の軸はこの2人だとわかっていたので、2人の仲を出来るだけ演出しようとしていたとも解される。
真船さんはそういう意識が最も強かったのであろう。
しかし夕子にオシッコと言わすのは流石にどうなんだろう。
今やったら抗議殺到じゃないかな。

ヤプールとの異次元対決のシーンは特撮がいまいち。
炎がガスコンロに見えるし、映像もそれほど凝ってない。
まあ、それでも雰囲気だけは出てたので、ヤプールの最後としてそれなりの舞台になっていたが。
北斗の叫び声が聞こえた夕子。
これは夕子の特殊能力かそれとも・・・。
まあ宇宙にいる北斗が見える夕子だからそれくらいは朝飯前か。
何故か北斗を信じる梶。
まあこれは科学者が信じることにより、逆に事態の異常性を際立たせようとしたのだろう。
世の中科学でわからないことが一杯ある。

老人はシャカだのキリストだの。
日本人では親鸞を挙げている。
また末世だのなんだの。
海は黄色だの、花は死んでいるだの。
もはや子供向け特撮番組を逸脱してるな。
ところであの踊りはええじゃないか運動が元ネタだろうか。

さようならエースのナレーション。
最終回かと勘違いしそう。
しかしヤプール死すとも超獣死なず。
超獣とは一体何者なのか。
まあ、その辺は他の研究本に任せることにします。

遂にヤプールが倒れる23話。
ストーリーはちょっと問題を感じるが、映像や演出でそれを補っている。
宿敵の最後に相応しい妖しい魅力のある話に仕上がったと言えるだろう。
これも真船監督の手腕の賜物である。
しかしその真船さんも次の話を最後にエースから退いている。
初期エースを支えた監督、脚本家、そして宿敵がどんどん去っていく。
エースの不幸は視聴率という超獣を超える存在のせいなのか。
そしてその不幸は一方の主役(ヒロイン)にまで及ぼうとしている。
まさに危機はそこに迫っているのである。


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