鳩を返せ!


データ

脚本は田口成光。
監督は真船禎。

ストーリー

パトロール中の北斗と南は鳩(小次郎)を飼う少年三郎に出会う。
少年は母親から家で鳩を飼うのを禁じられて外で鳩を飼っていたのだった。
基地に帰った北斗はTACの無人飛行機の話を聞き、その回収機能の研究に鳩の帰巣本能を利用することを進言する。
三郎から鳩を借りたTACは早速実験を開始。
しかし、これを見ていたヤプールは逆に鳩を捕まえ帰巣本能を利用してTAC基地を襲うことを計画した。
鳩は実験中突如北斗の視界から消え、行方不明となる。
結局何処に行ったかわからないまま、北斗と山中は少年に状況を説明に行った。
事実を話すことを躊躇する北斗を尻目に山中ははっきりと鳩が行方不明だと告げる。
駆け出す三郎。
北斗は三郎を捕まえ鳩笛を吹けば鳩が戻ってくるかもしれないと言う。
北斗と三郎は鳩を見失った地点で鳩笛を吹くことにした。
しかし三郎が鳩笛を吹くと超獣が出現。
その超獣こそヤプールによって小次郎の脳を移植された超獣ブラックピジョンであった。
TACが出動し、超獣を攻撃。
TAC基地を襲わせるつもりだったヤプールはこれに慌て、ブラックピジョンを回収する。
基地に帰って1人考えこむ北斗に対して夕子が話しかける。
北斗は超獣の正体が小次郎であると考え、三郎に鳩笛を吹かないよう注意しなければいけないと言う。
北斗と南は少年の家へ行き母親に話を聞くと、少年が鳩を拾ったという晴海ふ頭へ向かった。
そこには三郎がいて鳩を呼び戻そうと鳩笛を吹いていた。
止めようとする北斗、南。
しかし時既に遅し。
笛に釣られてブラックピジョンが出現する。
南がTACに連絡すると、スペースとファルコンが飛来。
鳩笛に惑わされて計画が失敗したヤプールはふ頭でTACを壊滅することにした。
TACは超獣に苦戦し、ファルコン、スペースともに撃墜された。
その時、2人のリングが光りエース登場。
しかしエースはブラックピジョンの攻撃に大苦戦する。
何とか立ち直ったエースはメタリウム光線を放つが逆に吸収され撥ね帰されてしまう。
まさに絶体絶命。
その時、超獣がもう小次郎ではないと悟った三郎は鳩笛を吹く。
超獣の動きが止まった。
エースは超獣の背後からダイヤビームを放ちブラックピジョンを何とか倒した。
三郎は神社の境内で倒れている小次郎を発見。
小次郎は脳髄を吸い取られながらも、三郎の鳩笛に引かれて自分の巣の近くまで帰って来ていたのだった。
別れを惜しむように笛を吹く三郎。
それを見守る北斗、TACの隊員たちはヤプールへの怒りを新たにするのであった。

解説(建前)

今回のヤプールの作戦は鳩の帰巣本能を利用して超獣にTAC基地を襲わせるというものであったが、ヤプールはTAC基地を何回も襲っておりこんな回りくどいことをする必要はないように思える。
これはおそらくTACの研究を邪魔し、自分達の力を見せ付けることに主眼を置いたヤプールの悪意から出た作戦であろう。
TACの計画を即座に察知し、このような計画を立てるヤプールの情報網は恐ろしいものである。
超獣が鳩に似てたのは鳩の脳髄が宇宙生物の体の成長に影響を与え、ああいう外形になったのではないか。
合成の対象になった生物も鳥に近い外形をしているのかもしれない。

感想(本音)

無人飛行機の研究に鳩の帰巣本能を使うというかなり強引な話であるが、ストーリー自体は切ない系の話で悪くない。
ノンマルトのテーマも効果的に使われており、話を盛り上げるのに一役買っている。
今回の脚本は田口さん。
シリーズ中盤で多く見られる少年を中心に置いた作劇であり、田口さんの得意ジャンルでもある。
個人的な感想としては、エピソード自体はしっかり出来ており主役の2人も活躍するのでそれなりという感じ。
そんなに好きなタイプの話ではないが、たまにはこういうのもありだろう。
こういうのもメインの脚本家が3人いるメリットでもある。

そんな感じで脚本にはそんなに感想はないが、今回は真船監督ということでかなり凝ったカメラワークが多用されてたのが気になった。
まず、基地で北斗が1人考えてる時のカメラワーク。
遠くからのアングルから長回しで接近したアングルへ。
また晴海ふ頭のシーンでも北斗と夕子に接写して周りを回るというアングルを使っていた。
このカットは夕子がTACへ連絡するシーンまで続き、緊迫感を盛り上げるのに成功している。
とどめはラストの三郎と北斗のシーン。
下から2人を見上げるアングルから頭上の木々を回りながら録るカットでエンディング。

まあ、かように真船さんはカメラワークに神経を使う。
これらいずれも手持ちのカメラで撮影されており、カメラマンの方もさぞ大変だったであろう。
真船演出といえば夕子だが、今回はストーリー的に地味な役回りなのであまり印象に残った場面はなかった。
強いてあげれば変身のシーン。
リングが輝いてハッとするシーンは何か久々に見た気がしたし、タッチまでの走っていくシーンのためがいつもより長い気がした。
またその時のBGMも初期の雰囲気に近かったように思う(この辺はかなり主観です)。
極めつけは前回から登場の仲良しタッチ。
まあ、これは派手な変身がPTAの反感を買ったからという説もあるが、オリオン星人の回でド派手に変身してたので、やはり監督の趣味と考えた方が妥当だろう。
エースにおける変化球的な演出を好む点はエース版実相寺といった趣もある。

あと、細かいツッコミを少し。
今回のヤプールのテンションは異常。
ビジンダーのボタンをはずす時のビッグシャドー並だった。
敗北続きで変になったか。
鳩を飼えない理由が糞に含まれるサルモネラ菌というのが現代を先取りしてて良い。
夕子の「そう言えば超獣は鳩に似てたわ」ていうのもなんだかなあ。
「誰も信じちゃくれないよ」。
北斗も成長したものだ(と言ってもこの後同じことを繰り返すが)。
ヤプールがピジョンに光線を吐けと命じたら火を噴いたのは、本編監督と特技監督の意思の疎通が失敗したのだろう。
まあ、ピジョンが命令に逆らったでもいいのだが。
今回は田口さんということで久々に超獣合成マシーンが登場(6話以来2度目)。
やはり発案者だけに愛着があるのか。
山中の「エースの最後かもしれん」は無情。

この時期のエースは2人変身の設定にも違和感がなくなり、安定期に入ったという感じ。
逆に言うと、マンネリの恐怖も接近してるわけで、その一方策として夕子降板が考えられたのなら悲しい限りです。
市川氏も脚本を書かなくなり、徐々にエース迷走が見えてきた中盤戦といった感じでしょうか。


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